2015年11月

2015年11月30日

暁雲便りNo.36:読書の秋~11月の本棚

『あたゝかき十一月もすみにけり』(中村草田男)



漫画家の水木しげるさんが亡くなりましたね。今月は「昭和の残り香」のような方々の訃報が多く、自分も半世紀生きたしなぁ…身体の不調が長引くとスゴく年齢を意識するようになりました。なんか50代って思っていた以上に中途半端な気がします。



今月は「読書の秋」らしくたくさん本を読めた気がします。神様や神社関係の本が多かったかも……特に小野田さんのご実家が神社なのは驚きました! また来月もいろんな驚き・トキメキ・妄想も!いっぱいつまった本に出逢いたいものです(´∇`)



今月もお付き合いいただき、本当にありがとうございました。また来月も最初の更新は遅れるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。皆さま、お身体に気をつけて下さいませ。



《11月の本棚:計18冊》

「少年十字軍」(皆川博子)「神様の御用人2」(浅葉なつ」「神様の御用人3」(浅葉なつ)「鴨川食堂おかわり」(柏井壽)「スープのささやき ゲストハウスわすれな荘」(有間カオル)「読めない遺言書」(深山亮)「Happy Box」(アンソロジー)「転生」(鏑木蓮)「宵越し猫語り」(書き下ろし時代小説集・アンソロジー)「ランチタイムは死神と」(柴田よしき)「化け猫、まかり通る 猫の手屋繁盛記」(かたやま和華)「日御子 上・下」(帚木蓬生)「美しき一日の終わり」(有吉玉青)「神様の御用人4」(浅葉なつ)「心はあなたのもとに」(村上龍)「紫式部の欲望」(酒井順子)「ことば汁」(小池昌代)




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2015年11月29日

暁雲便りNo.35:紫のウチとソト

『長く黒い髪と、重い十二単の下で、紫式部はどのような欲望をたぎらせていたのか。源氏物語の中に、そのヒントは隠されています。一つ一つの欲望をつまびらかにすることによって、源氏物語と紫式部とは、私達にとってより身近なものになるのではないかと、私は思っています。』


酒井順子さんの『紫式部の欲望』をイッキ読みしました! 源氏物語は大和和紀さんの漫画も途中で人物の区別がつかなくなり読むのをやめてしまい、宝塚の舞台も観たことがなく、昔見たテレビでは赤鼻の末摘花と生き霊の六条御息所しか記憶になく……それに名前だけ知っていても女だと思っていた人が男だったり……(((^^;) 


源氏物語は長保3年(1001年)には、ある程度完成したと言われる小説。全54帖に及び、文字数は約100万(400字詰め原稿用紙で約2400枚)の大長編。70年間にも渡るストーリーには、約500名の人物と約800首の和歌が登場……紫式部が才女だったとわかりますわ。


私は酒井さんの本を文庫で買ったのですが、200ページくらいで読みやすく、登場人物の性格も当時の風習・風俗などわかりやすく書かれていたし、巻末に簡単なあらすじや相関図もあって大変助かりました! 紫式部も今の私たち(?)と変わらぬ妄想をたくましくして「秘密をばらしたい」「ブスを笑いたい」「専業主婦になりたい」など、物語の中で日々の暮らしのストレスを物語にして発散していたのだと思える笑えるエッセイでした。解説は三浦しをんさん。「本書を読むとうなずきすぎて首がむち打ちになる。」……確かに! 学校の授業でもコチラを教材にしたらいいのに……と思いましたわ。


学校でちょっと思い出したことがあります。川原泉さんの漫画に『笑う大天使(ミカエル)』というお嬢様学校が舞台の作品があります。昭和60年代ですよ、昔話が好きですみません! 主役は巨大な猫をかぶった3人の娘さん(笑) 源氏物語を読んでレポート提出しなさい!という話があるのですが、架空のプレイボーイ(これも懐かしい響きがあるなぁ)光の君に腹を立てまくり、それぞれの印象は《知的ブレーキのあまり利かない性格か或いはブレーキ自体が存在しない質(たち)の「歩く煩悩様」の典型的な例》《性的衝動の赴くまま他を顧みる事無く自らの欲望を満足させなければ気が済まない「性衝動人」》《独りよがりの悩みで周囲の人々を不幸に巻き込むだけでなくさらにその執着心と多情さで不幸を拡大させるという「増殖ワラジムシ」》とかなり辛辣! 今の女子高生だったら光源氏にどんなキツい言葉を浴びせるのかしら? それともただギャハハ(o^ O^)シ彡☆と笑い飛ばすのかしら?



同じ望みでも「希望」というと清らかな関係、「欲望」というとドロドロなお肉の関係なイメージなんですが(あくまでおやぢなワタクシの場合)エーリッヒ・フロムという心理学者は『私たちの欲望は「外に対して願望を持つ」ということ』と言っているらしい。地位や名声、財産などを求めることは外の願望で、希望は内なるもの。紫式部には希望ではなく欲望を感じた酒井順子さんはさすが!なのかも(≧∇≦)



明後日はもう師走。気温も低くなってきました。皆さま、お身体に気をつけて下さいませ。





rohengram799 at 20:51コメント(8) 
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2015年11月28日

暁雲便りNo.34:ことば汁

なんとなく摩訶不思議というか、物語の出だしはそうでもないのにだんだんアレヾ(゜0゜*)ノ?な方向にいってしまう短編集『ことば汁』(小池昌代)を読んでいます。タイトル自体がなんでしょ、これは(´・ω・`)?ですが……「女房」「つの」「すずめ」「花火」「野うさぎ」「りぼん」の6作品。


最初の作品はザリガニが出てきたのですが、次は鹿。老齢の詩人の「先生」に長年仕えてきた秘書の「わたし」。とある山間の別荘地のコンサートホールのこけら落としで、先生の朗読会が行われるので、わたしは先生を車に乗せて別荘地へと向かっている途中。読者から秘書になり30数年、結婚もせず「すべては先生のために」と先生のお世話をしてきました。朗読会では「鹿」を読むと先生は言います。


この詩の内容が私は結構気に入りました! 水を飲んでいた一匹の雌鹿が、若い狩人に恋をしてしまいます。水辺を守る神様にほんの少しでいいから人間の女になりたい!とお願いすると、2つの条件を快諾するなら願いを叶えようと言います。1つは「余命を半分もらうよ~」もう1つは「決して嫉妬しない」若い狩人には美しい妻がいます。でも一緒になりたいとか私だけを見て!とかそういう気持ちを抱いてはいけないと。約束を破ればすぐ鹿の姿に戻され、命はさらに半分に……それでも構わないと美しい乙女になったカノコちゃん←勝手に名付けました(笑) 狩人の前にあらわれ、想いを遂げますが、やはり嫉妬心は押さえきることは出来ず………鹿の姿で再び現れた時に狩人から一撃のもとに殺されてしまうのでした。ヨヨヨ( TДT)


なんて浪漫溢れるんでしょう~!ギリシャ神話みたいだ、と思ってよみ進めていたら、先生に「鹿」を読んでほしいという女が現れていたらしい。「今日は彼女を思って読みましょうかねぇ、ウヒヒ( 〃▽〃)」……わたしの中にムラムラムカムカとした何かが沸き上がる……(`Δ´)……先生とわたしのあいだに、まったく何もコトが起こらなかったのに!わたし、むしろ待っていたのに!めくるめく官能の世界を、肉体のよろこびも知らぬまま60歳になろうとしているのに……!!


次のインターで降りればもうすぐというときに、突然、爪が伸び始めてハンドルに絡みつき、頭髪からはツノが生えてきた! これは彼女の内面が見せているものなのか、事実なのか………そして「こんちくしょう! なにが詩人だ。老いぼれじじいめ、助平やろう」……老詩人を慕い、生涯をかけて自分を捧げてきたわたしもまた、助平なおいぼれのひとりであると、思い至ったのでございます……。



鹿って古代から神格化されてきましたし、清らかな乙女の象徴的なところもありますが、漢方薬としての効能も高く(どこの部分がナニにとか書きませんが)鹿のツノがワンちゃんのおやつとして販売されているのですね。ナイフの柄とかに最適!とかいうのは雑誌(ナイフマガジン)で見たことがありますが、犬のおやつは全く知りませんでした。



どこかで鹿を見かけたら、この話を思い出して下さい(≧∇≦)





rohengram799 at 19:52コメント(8) 
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2015年11月27日

暁雲便りNo.33:心はあなたのもとに

《「悪霊はらう」糖尿病の7歳、治療させず死亡》……新聞にまた痛ましい見出しが……。


体を触る行為を「治療」と称し、重い糖尿病を患っていた宇都宮市の男児(当時7歳)に適切な治療を受けさせずに死亡させたという栃木の会社役員の男(60)。男児の家族によると、男は「悪霊をはらう成功報酬」などとして、両親から200万円以上を受け取っていたとか。男は男児が1型糖尿病と診断されていることを知りながら、治療に不可欠なインスリン注射をさせずに男児の足や腹を触るなどの行為を繰り返したことで今年4月男児を殺害した疑い。病気治癒にお祓いとか薬や病院以外のものに頼りたくなる気持ちはわかります。その気持ちを利用してお金をまきあげるだけでなく暴行とは……。


テレビでも1型糖尿病について解説していましたが、膵臓のβ細胞が壊れてしまい、まったくインスリンが分泌されなくなってしまうのが1型糖尿病。インスリンを体外から補給しないと生命に関わるため、インスリン注射を欠かしてはなりません。私たちがよく知っているのは2型糖尿病という、遺伝的に糖尿病になりやすい人が、肥満・運動不足・ストレスなどをきっかけに発病する方ではないでしょうか。1型糖尿病を発症するのは子どもや若い人に多く、最初は風邪に似た症状が出るそうです。



『心はあなたのもとに』 (村上龍)というタイトル買いした本を読んでいたのですが(解説が小池真理子さんなのも決め手でした)その主人公の恋愛対象となる女性がこの1型糖尿病患者でした。


「恋の対象というのは、常に不在なのではないか」……そう書いたのは、フランスの哲学者、ロラン・バルトだったと思う。/恋する相手が不在であれば、恋ごころはかきたてられる。恋人が遠い外国に行ってしまったり、重い病で入院していたり、その他、様々な事情で触れたいと思う時に触れられず、話したいと思う時に話せなくなると、私たちの恋はより深度を増す。恋人に向けた想いがいっそう強まる。


小池真理子さんの解説はこんな文章から始まりました。主人公というか物語をすすめるのは西崎という50歳を少し超えた、「外資で鍛えられたエリート」投資家で、2度目の結婚をした7つ年下の妻との間ふたりの娘がいます。夫婦仲はよく、娘たちはすくすく育ち、家庭は円満で何の問題もない。


そんな金に余裕が有りすぎる男が、いろいろ遊び歩いているのに風俗で働いていた香奈子という離婚歴のある女性と特別な関係を持ちます。パトロン的な感じですかね? 風俗をやめさせ、銀座のホステスになり、管理栄養士を目指し専門学校へ通わせたり……入院費も負担したり……しかし病状はアップダウンを繰り返し、結果的には悲しく寂しい結末に(これはもう最初からわかっています)。


西崎に対してイヤな男と思う人もいるでしょうが、私は病人の気持ちやその人との接し方(というと語弊があるかもしれませんが)についての描写はうんうんと納得するものでした。心療内科の医師のアドバイス的なものも素直に受け入れられたし……エロエロ場面が思ったより少なく、ビジネスと恋愛の話のバランスもよかったからかも。彼の両親や家族についてはこんな人たちもいても不思議ではないよね…って感じ。こんな世界の人たちと全く知り合いではないのに、リアリティがあるというか……さすが大物作家は違うなぁと(笑)



『誰かを大切に思う気持ちは、何かを変化させ、いつか必ず相手に届く。』



この言葉にお鼻がツーン!となったワタクシです。ラストはちょっと…という人がいるかもしれませんが、私は好きです。『美しき一日の終わり』のねーさんがあまりにも世話焼きでうっとおしい愛情だったのに比べて、こちらのふたりの方が純度が高い気がしました。あくまで私の感想ですけど(^o^;)






rohengram799 at 23:50コメント(10) 
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2015年11月26日

暁雲便りNo.32:「オノマトペ」にあらず

今月は『神様の御用人』(浅葉なつ)の続編、2・3・4巻と続けて読んでいます。参考までにおぼろ雲便りNo.16:五十恵を…!



古代の神様の名前はふりがなをつけられても読みにくくて大変なのですが、最新巻の話では「名草戸畔(なぐさとべ)という神様が登場します。名草戸畔とは、はるか縄文の昔、名草地方(現:和歌山市海南市)を治めていたとされる女性首長のこと。名草戸畔は『日本書紀』に九州から攻めてきた神武軍に「殺された」と一言だけ記されているだけで謎の多い神様。土地にはその遺体を頭、胴体、足の三つに分断し(敵方に遺体を切断された説が有力)三つの神社に埋めたという伝説があります。


ところが、これとは違う物語が残っていることがわかりました。なかひらまいさんという方がいろいろ調べて、郷土史家の小薮繁喜氏と小野田寛郎氏の協力により『名草戸畔古代紀きの国くにの女王伝説』という一冊の本になりました。


ウェブサイト:http://studiomog.ne.jp/nagusa/


「神武軍は名草軍に撃退されて仕方なく熊野に行った。しかし最終的に神武が勝利し天皇に即位した。そのため名草は降伏する形になったが、神武軍を追い払った名草は負けていない」。小野田家では、名草戸畔は自分たちの遠い祖先と伝わっているそうです。



小野田さんの名前にアレ?と思ったアナタ、そう、戦後、フィリピンのルバング島のジャングルに約30年にわたって潜伏し、その後、日本に帰還した元日本兵・小野田寛郎さんです!ご実家は海南市小野田の「宇賀部神社」の宮司家なんだそうです。宇賀部神社は昔から「名草戸畔」の頭を祀ると言われていて、宮司家の小野田家には名草戸畔の伝承が代々口伝で残されていました。小野田さんは父や祖父からその口伝を聞いて育った最後の伝承保持者だったのです。



ルバング島から小野田さんが帰国した時にはエーッ、そんな人がいるんだ!という感想で、ご実家のこととかご家族のこととか気にした記憶がありません。だから、本文後のコラム的なものに小野田さんの名前を見つけてビックリしました………まさかここで小野田さんと巡り会うなんて( ̄□ ̄;)!!


物語中に小野田さんご自身は登場しませんが、もしあの戦争がなかったら、全く違う人生を歩まれていたのだろうなぁ……と考えてしまいました。神主さんになっていたかもしれないし、歴史学者、郷土史家になっていたかもしれない……これは小野田さんだけではありませんが、いくつもあった可能性や未来を奪ったのが戦争なんだとあらためて思いました。



このシリーズはまだまだ続きそう……神様の名前は覚えられそうにありませんが、神様とのご縁が深くなったかも……しれないと都合よく考えているワタクシです( ̄▽ ̄;)





rohengram799 at 20:29コメント(8)トラックバック(0) 
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