2017年05月

2017年05月26日

起雲便りNo.20:愛玉

「かつて、愛は高級品だった。庶民が手を出せるものではなく、お金持ちだけが買える贅沢な代物だった。」



電子書籍をアレコレ探していたら、高橋熱さんという人の作品が無料で、また「超短編小説」とあったので2冊ばかりダウンロードしました。最初の文章は「愛玉」という作品の書き出しです。



収録作品は全10編。

1. 愛玉
2. 奇痒譚
3. バレンタイン騒動
4. 壁画の娘~銀座ライオンの恋
5. 気の毒な老人
6. 名刺奇聞
7. 男と女が再びホテルで会う理由
8. 『マアクンとコウタン』
9. 螺子(ねじ)
10.愛のミステリーツアー



表題作ですが、愛玉を買っても風船みたいにしぼんでいってしまい、また買うことになり、生活は穏やかになるけどしばらくすると元通りで、また愛玉を買うの繰り返しに。愛って買うものじゃなくて、自然発生的に生まれてくるものじゃないかと。


「気の毒な老人」は右足、左足、両腕と壊死していく度に切断して火葬して・・・でホラーテイストなんですが、自分の身体に感謝してきちんとお別れが出来たって、案外幸せなんじゃ・・・と思わせる話でした。




話は変わりますが、「熟睡」と書いて「うま い」と読むことを知りました。「味寝」とも書くようです。意味はもちろん気持ちよく熟睡すること!


いろいろ調べていたら、古くは「安寝(やすい)」が単に安眠であるのに対し、男女が気持ちよく共寝することをいったとか・・・となりでイビキがうるさい!とかはなかったのか?と色気のないことを考えてしまいました。



またまた仕事でウンザリすることがあり、少し更新が停滞してしまいましたが、不眠も食欲不振になることもなく、むしろ帰宅後ガッツリご飯で・・・ヤバい状況に・・・(;´Д`)


プレミアムフライデーという言葉もむなしい金曜日ですが、皆さま、良い週末を ヾ(´ー`)ノ


2017年05月22日

起雲便りNo.19:それでいいのだ!

『朝、床屋で』   安西 均

春めいてきた朝。
理髪店の椅子に仰向けになり、
顔を剃(あた)ってもらっている。

ラジオは電話による身の上相談の時刻。
どこにもありそうな家庭のいざこざ。
だが、どこにも逃げ場がない、と
思いこんで迷っている、涙声の女。

つい貰い涙がこぼれそうになるのを、
唾をのみこんでこらえているが、駄目だ。

こめかみを伝って、耳の孔に
流れこもうとするのを、自分では拭へない。
すると、剃刀を休めたあるじが、
タオルの端でそっと拭いてくれた。
何だか失禁の始末でもしてもらった気分だ。

椅子ごと起こされると、鏡の中から
つるんとした陶器製の顔が、
わたしを見つめている。

ーーーいいんだ、それでいいんだ。
そう言っているような澄まし顔だ。

何がいいのか、よく分からない。





安西均(あんざい ひとし、1919年3月15日 - 1994年2月8日)さんは、福岡県生まれの詩人で、1943年朝日新聞社入社。勤務しながら現代詩壇にて活躍された方だそうです。


『朝,床屋で』 の作品は 詩人・安西均が1993年に刊行された詩集『指を洗う』 に収録された作品。



朝から床屋に・・・ということは、もう定年されている方なのかな、とこの人物について考えます。ラジオの身の上相談にもらい泣き、年齢とともに涙もろくなってしまったのでしょうか、床屋さんの対応が素晴らしいです。床屋さんは男性か女性か・・・私はこの方に子どもさんがいたら、同世代くらいの男性かなと思いました。


何がいいのか、よくわからない・・・だいたい毎日の暮らしってそんなもの、と考えるのは私だけかしら? なんとなくよくわからなくても、自分を肯定したい時ってあるし・・・。



「人生、それでいいのだ !」



rohengram799 at 23:52|この記事のURLComments(10)

2017年05月20日

起雲便りNo.18:マーシュ

うーん、仕事のストレスが減りません(ーー;) まだこちらが言ってもいないことを担当者に言うかなぁ~ある備品を使うなと言いながら、「オスカーさんはずっと使っている」と言ったらしい・・・いつそんなことを言ったんだよ、私が(`Δ´)


もう本当にイヤになってしまいます。もう辞めようか、しかし辞めてどうする?の繰り返しです。今日は休みだったので、ストレス解消に文庫本買いまくってきましたわ!




そのうちの一冊が『窓がない部屋のミス・マーシュ 占いユニットで謎解きを 』(斎藤千輪・角川文庫)という薄い本です。 占い師の話は以前瀬尾まいこさんの『強運の持ち主』を読んだくらいかな? 表紙買いしてしまいました(´∇`)


読んでいくと「マーシュとは、ラプンツェルという植物のフランス名だ。」とあり、ラプンツェルって童話の主人公の名前だけじゃなかったのか~!


ラプンツェルは「チシャ」と訳されることがあるが、本来はキク科のレタス(ちしゃ)ではないそう。ラプンツェルと呼ばれる野菜はオミナエシ科のノヂシャ、キキョウ科のCampanula rapunculusなど複数存在する。妊婦が食べると良い植物ではあるようです。日本だと妊娠中に食べると良いものってなんだろ?


長い髪のラプンツェルの方ですが、母親は妊娠中に魔女の庭のラプンツェルを食べまくっていました。妊娠中にあるひとつのものしか口に出来ない人っているみたいですね。川原泉さんの漫画で妊娠中に花ばかり食べているお母さんから生まれた女の子が、笑うたびに花がどこからともなく出現するというのがありました。ただ季節感はなく、また気のない笑い方だとアザミとかトゲのある花が出てきてました(^^;)))


グリム兄弟の童話ですが「初版では主人公が夜ごと王子を部屋に招き入れて逢瀬を重ね、結果として妊娠。それがばれてしまったため放逐されたプロセスを詳細に書いている」とWikipediaで調べたら書いてありビックリしました(*゜д゜*) 私、話を全部知らないので、うわぁ、単純に王子さまとメデタシ、メデタシではなかったのか・・・後世、かなり変更したんでしょうね(;´Д`)




今日は夏のような暑さでした。アイスが美味しくて食べすぎてしまう~お腹が痛くなる前にやめないと! 皆さまもお身体に気をつけて下さいヾ(・д・。)♪



2017年05月18日

起雲便りNo.17:あかい猫

青空文庫にあった『赤いねこ』(沖野岩三郎)というタイトルが気になり、読んでみました。


雨がしとしと降った翌日に、看板に赤いインキで書かれたお知らせが流れ落ちてしまい、全く役にたっていないことに「これはいけない」とみょうな使命感に目覚めたおじいさんは、自分が雨にうたれても水をかけられても消えないインキをつくるぞ!とはりきり、成功させます。

ある日のこと、家の近くの空き地に一匹の白い猫がいました。とても綺麗な野良猫が家までついてきます。おばあさんとウチで飼いましょうということに。そしてこのおじいさん、何を思ったか、自分の作ったインキで猫を真っ赤に染めると言い出しました。猫が特に抵抗した様子がないとはいえ、これは・・・動物虐待、動物実験に近いものがないかい?

真っ赤になった白ねこ、おじいさんとお風呂に入ったら元通りに! おじいさん、毛もしっかり赤に染まるインキの開発にまたまた着手します。そして成功! じいさん、何者なんだよ?
 

しかし、時間経過とともに元通りになってしまうかも知れないので、大きな箱に入れて外に出さないようにして様子をみようと。しかし、とても猫が鳴く日があり、おばあさんはちょっとだけ箱を開けました。喜んで出てきた猫は部屋の中をはしゃぎまわります。そして障子の隙間から外へ!


「白よ 白よと よんでも、赤よ 赤よと よんでも、どこにも ねこの すがたは 見えません。」
・・・ここは子どもが聞いたら笑うところなんでしょうか? 猫は屋根の上にのぼり、あちこち眺めて嬉しそう。そうこうしているうちにご近所さんが集まり、赤い猫は注目の的に。

 
・・ みんなが わいわい いって さわいで ゐますと、一人の 男が、
「わかった、わかった。ここの おぢいさんは、雨に うたれても、水を ぶっかけても きえない 赤インキを 売って ゐるが、その インキは、あの ねこの 毛で つくるんだ。これで わかった。」
と、いひますと、みんなが、
「さうだ、さうだ。あれは インキの もとだ。」と、申しました。・・・


やめてぇ~!と叫びたくなるような展開(´д`|||)
 猫はそのうちに降りてきたので、おばあさんは抱いて家の中に。赤い猫を見たい人たちも家の中に。 そこへ一人の立派なご婦人が「おばあさん、その ねこを、十円で 私わたしに 売って 下さい。」と言うので、おばあさんはこれはもともと白い野良猫で赤インキで染めたものだと言いましたが、だんだん値をつり上げていきます。二十円で 売って 下さい。」


・・・「おくさま、これは ほんたうの のらねこで ございますよ。三十銭の ねうちも、五十銭の ねうちも ありはしません。これは 白い 毛を 赤インキで そめただけ ですよ。世界ぢゅうに 赤い ねこなんて あるもの ですか。」
 おばあさんが、大きな こゑで どなるやうに いひますと、女の人は、
「さうですとも、世界ぢゅうに 赤い ねこなんて、たった 一ぴきしか ゐやしません。では 思ひきって、百円 さしあげませう。」
と、いって また 五十円 出して ならべました。
 おばあさんは、こまって しまって、たたみの 上の お金を あつめて、かへさうと しました時、だいて ゐた 赤ねこが、のこのこと その 女の 人の ところへ あるいて 行きましたので、女の 人は とても よろこんで、その ねこを 両手で だいて、
「では おばあさん、この ねこは 私が つれて 行きますよ。」
と、いって 大いそぎで おもてに 出ると、自動車に のって、どこかへ 行って しまひました。
・・・


この後、どうなるかと言いますと、おじいさんは猫を連れていったご婦人がお金持ちの貴族だと判明。臆することも媚びを売ることもなく、あれは染めた猫だとおばあさんと同じ事を説明します。ご婦人はあなた方の正直さに感心したので、百円で野良猫をもらいますと。そして別に一万円貸すので、インキ工場をつくりなさいと。

 

・・・ある日の こと、ねこを 買った 女の 人が 会社に 来て 見ますと、会社の おもてには、おぢいさんの 下手な 字で、
インキ インキ 上とうの あかインキ
雨に うたれても 水を ぶっかけても
きえない 上とうの 赤インキ
白ねこを そめて かめのこだはしで
ごしごし あらっても 白くならない
上とうの 赤インキ製造会社
と、赤インキで 書いた、大きな かんばんが、かかってゐました。・・・



メデタシメデタシなんですかね? 黒い猫は不吉だけれど白い猫は幸運を運ぶとか、正直者にはいいことがあるとか、猫の恩返しみたいな話? う~ん、やっぱり染めるとか、縁日のカラーヒヨコを思い出して素直に「おじいさんの発明はスゴい!みんなのためになったね!」とか思えない~モヤモヤする!


作者の沖野 岩三郎(おきの いわさぶろう、1876年1月5日 - 1956年1月31日)ですが、Wikipediaによると「和歌山県生まれ。明治学院神学科卒。和歌山県で伝道中に大逆事件に巻き込まれる。1917年大逆事件をモデルとした小説『宿命』が大阪朝日新聞の懸賞に当選、1918年上京して芝三田統一基督教会の牧師となり、宗教活動をしながら小説を書き、牧師作家と呼ばれ、児童読物、通俗小説のほか『娼妓解放哀話』で知られる。」そうです。



他の作品を読んでみたらまた違うかしら? 青空文庫はスマホだと読みにくいんですよね・・・(;´Д`)



2017年05月17日

起雲便りNo.16:花と茶と鉄

5月も半ばを過ぎました。比較的新しい季語に「新樹光」というのがあるそうです。「新樹」だけはよく聞きましたが「光」という一文字が加わるだけで、場景があざやかになりますね。




「花笑み(はなえみ)」という言葉もよく聞きます。この花はわたしです。やっと綺麗に咲いたのです・・・は桜田淳子さんの♪三色すみれの冒頭のセリフですが、この花は百合をさしているようです。


万葉集に「道の辺の草深百合の花笑みに笑みしがからに妻と言ふべしや(作者不詳)や「夏の野の茂みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものぞ(坂上郎女)という歌があるそうで、花全般を指すのではなく「花笑み」の「花」は百合で季節は夏になるとか。清楚な美人の微笑み、日本画のイメージですね。


季語の「花」は桜、「山笑う」も春の季語なので満開の桜の吉野山などを想像していましたが、山自体はいろんなものが芽吹いてハーレム状態でウハウハなのかも?とまだバカな子とを考えてしまいました~1年を通して山にはその時々の美しさがありますから、花の有無は関係ないと思いますが(^^;)))



八十八夜も過ぎましたが「空茶(からちゃ)」という言葉があるのですね。お茶菓子がなくても、なにかお茶請けとなるものを出すことがマナーだと。ウチは商売をしていたので、お菓子も漬け物も売るほどある状態、お茶請けがないということはなく、こんなにいろいろどうするんだ?でした。だから「空茶で失礼ですが」と言うことはなかったなぁと思い出しました。


「お持たせ」という言葉も最近になって知りました。お客さまが持ってきたものを、その人にもてなしとして直接出す時に、もてなす方が言う言葉ですね。こんな品のいい言葉ではなくて「もらったもんをすぐに出してわりいじゃん」「早速もろうじゃん」と方言丸出しで母が言っていたのを思い出しました。だいたい遠方からのお客様からいただいた物はお仏壇直行で、お客様が帰られてから「食べていい?」状態だったので(;´∀`)



話は変わりますが、佐川光晴さんの『鉄道少年』を読みました。国鉄が健在だった1981年、北海道から東京までひとりで旅をする不思議な男の子が・・・室蘭本線、中央線、東海道線、相模線・・・彼の存在は出会った人々の記憶に深く刻まれます。彼はなぜひとりで旅しているのだろう? 成長した男の子は鉄道に関わる仕事につき、父親になろうとしています。5歳以前の記憶がない彼は、思いがけない形で自らの過去を知ることになります。


鉄ちゃん鉄子でなくても大丈夫(笑) たくさんのいろんな職種の人が鉄道を支えているのだということがわかります。そして、自分が小さい頃にガタゴト電車に揺られて母や兄と!また祖父と出掛けたことなどを思い出しました。甲府に行くのに「往復切符」があったのですよ~今だったら切符を買うよりSuicaでスマートに!ですよね~あの硬い切符が懐かしい! そして学割で東京に行くより「東京自由切符」を買ったほうが安い!とか言って友だちとキャーキャーしていた時代がよみがえる~!



花の道、茶の道、鉄の道・・・これからの人生が荊(いばら)の道になりませんように・・・(;´Д`)




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