ヒコーキ雲便りNo.29:「アン」な土曜日では坂木司さんの『和菓子のアン』についての感想などを書きましたが、今日はまたひと味違う、ほんのり桜色のしょっぱいドリアン助川さんの『あん』です。樹木希林さんが主演で来月映画が公開になるので、内容をなんとなく知っている方もいるかしらん?


線路沿いから一本路地を抜けたところにある小さなどら焼き店「どら春」。千太郎が日がな一日鉄板に向かう店先に、バイトの求人をみてやってきたのは70歳を過ぎた手の不自由な女性・吉井徳江だった。年齢的にアウト!なんですが、彼女のお手製のあんが絶品で、時給も200円でかまわないと言われ……雇われ店長の千太郎と老女の店舗再生物語(映画『タンポポ』みたいな)……と思いきや……。


徳江があんを作るようになると「どら春」の売り上げは伸び始め、初めての完売御礼も出るように(^o^)v しかし、ある日を境に客が減ってしまうのです。指が折れ曲がり、左右の目の大きさの違う老女・徳江が、ハンセン病患者だという噂が原因でした。たしかに彼女は難病の療養施設に暮らしていました。何十年も前に彼女の病気は完治し、ハンセン病は現代医療で簡単に治癒するものとなり、施設に暮らすすべての人が快復者です。ですが、長い隔離の歴史を生きた徳江たち元患者は、今も偏見から自由ではなかったのです。



第151号:書くことは生きること…『いのちの初夜』ヒコーキ雲便りNo.49:再びの命などで少し書いてきましたが、実際身近にそういう立場の方々に接したことのない私……正直、その場所に足を運ぶとなったらためらってしまうと思います。映像や写真だけではわからない、五感を刺激するものが絶対あるでしょうから。


後半は徳江さんの過去がわかります。病気とわかった時のこと、同じ病のダンナさんが強制的な断種をさせら子どもをもてなかったこと、家族のこと、裁判後のことなど、同じ園で生活している人たちのことなど……。ヘタレな千太郎に伝えてくれたたくさんのこと……最後はやっぱり涙が出ちゃう(´;ω;`)



桜の季節に始まり、また桜の季節に終わる語…………読みやすいのに、中身は「あん」がギッシリ!でどら焼きをしみじみ味わいながら食べたくなる一冊です。『多摩川物語』もよかったけれど、この本もよかった~映画も希林さんに頼りきりでなくて、原作の良さがきちんと表現されていたらいいなぁ。



今日は肌寒いになりそうです。皆さま、あったかいモノに囲まれた1日になりますように(*´∀`)ノ