2016年10月20日

徳雲便りNo.14:時代

テレビで「ハロウィンイベントの次に来る(新しいお祭りさわぎ)のはイースターではないか」と言っていましたが、本来の意味を全く知らないで騒ぎたいだけ!というのは、もうやめたらいいんじゃないかと思ってしまいます。鶏卵業者が「よっしゃー!タマゴ売りまくるで~!」とノリノリでイベント企画するなら、それはそれでスゴいな……と感心しますが。その後、別の番組でエッグタルトを見てダンナが「エッグ……タマゴか……中は、たまごやき?」とボソッとつぶやいていたので、ああ、だいぶお疲れなのね、と思いました(´;ω;`)



《慶長元年暮、こごえそうな寒風のなかを、ボロをまとい、みじめに垢じみて、一様に片方の耳をそぎ落された二十数人が、裸足のまま山陽道を引き立てられていった、長崎で磔に処されるために…。》


秀吉により、苛酷に弾圧された切支丹信者の悲劇を描いた『磔(はりつけ)』(吉村昭)を読んでいます。表題作の他「三色旗」「コロリ」「動く牙」「洋船建造」……史実を元にした作品ばかりで、今は蘭方医・沼野玄昌殺害事件を扱った「コロリ」まで読み終わりました。短編なのに、中身が濃い!いかに自分が歴史を知らないかを痛感しました。



《日本二十六聖人殉教地(西坂公園)》……長崎の観光ガイドには必ず出てくる場所ではないでしょうか、キリストが十字架に架けられたゴルタゴの丘に似ていることから、信者達がこの地を処刑の場に願い出たのだといわれているそうです。二十六聖人の殉教以降も多くの人々が“火あぶり”“水責め”“穴吊り”といったむごい手段でこの地で処刑されています。


戦後、原爆の破壊から立ち上がった長崎は殉教地であった小高い丘を公園にかえ、昭和31年に長崎県はこの丘を史跡に指定しました。26人の殉教者が列聖して100年目の昭和37年に、二十六聖人等身大のブロンズ像嵌込(はめこみ)記念碑と記念館が建てられ、西坂公園ができました。また、昭和25年(1950)には、ローマ教皇・ピオ十二世がこの地をカトリック教徒の公式巡礼地と定めています。



以前、長崎の教会を巡る旅番組で、この公園を見た記憶があります。「二十六聖人」という言葉はなんとなく聞いたことがあるという程度で、はじめから長崎にいた隠れキリシタンだと思っていました。小説では、殉教者たちよりも命令に従わなくてはならない、長崎奉行代理の心境がメインに描かれています。


まだ海外や外国人についての知識などなく、神道や仏教以外のものを信仰するということが信じられない時代です。彼らが口にする聞きなれない祈りの言葉も、ただ不気味に感じられるだけで、理解するとかしないの次元にはいっていないのですよね。 また純粋に布教目的だけの宣教師もいたでしょうが、日本が外国に乗っ取られてしまうのでは、植民地化しようとしているのではないか、という動きもあり……見せしめのために長い道中を歩かせ、処刑ということになったのでしょう。



処刑後、夕暮れになり、信者たちが「死体の衣服をはぎとり、柱を小刀でけずりと」り「翌朝、死体は、ほとんど裸体同然となり、柱にも刀の跡がおびただしかった。」という状況になります。監視する者たちもいましたが、海方向にはあまり目を向けていなかったようで、小舟で崖下に接近し、崖を這い上がったのです。死体を布切れで被い、近づけないように柵などもたてましたが、そんなものは関係なく、また衣類を持ち去ったとありました。


殉教者のものを何か少しでも身に付けたい、欲しい、そうしたら自分も神さまに近づくことが出来る、というような考えからの行動なのかもしれませんが……なんかあんまりじゃないだろうかと……ボロボロの姿で磔にされ、亡くなった後も同じ信仰心を持つ人たちに身ぐるみ剥がされるなんて……。


亡くなった人を悼む気持ちはどこに……と考えてしまったのは、イエスの教えを知らないからでしょうか? 彼らは自分たちの一部でも与えることが出来てよかったと思っているのでしょうか? 強い揺るぎない信仰心というものが、ぶれぶれで生きている私にはないのでわからなくて……非常に難しいです。



淡々と綴られた文章なので、自分の中でそれぞれの立場からいろんなことを考えることが出来ますが、処刑を扱っていますし、そういう場面は読んでいてキツいかなぁ、やっぱり……自分には出来ない!ってすぐ思ってしまいます。



二十六聖人に関連する作品はたくさんあるようなので、また興味をひく、読みやすいものがあれば読んでみたいです。





rohengram799 at 23:53コメント(10) | 空のお城図書館  

コメント一欄

1. Posted by 見張り員   2016年10月21日 07:41
おはようございます
吉村さんの著作は何作か読んだことがありますがその描写や細かくその歴史を調べつくし自分のものになさって描かれる姿勢にいつも感動を覚えます。三陸の大津波を扱ったものを読んだときは一気に読みました、ぐいぐい引き付けるってああいうことを言うんだと思います。

長崎26聖人の殉教地は修学旅行でその坂の下を通っただけですがその出来事自体は前に本で読んでいたので何やら凄惨な印象しかありません。
そうですか、殉教者の衣服をはぎ取って…私もそういった信仰を持ってはいないのでそうした行動をどう言ったらいいのか考えてしまいますね。
殉教者のものを身に着け、少しでもその理想としたものに近づきたいと思ったのか?そういう感情はあるとは思いますがでも目を転じたら、裸に剥かれた殉教者が…というのを見てなんともおもわんのかい!とおもちゃう私はだめなのかな???

うーん、今日はこの件、いろいろ考えてみたいと思います。

いい天気ですね、続くといいですね。でもまた冷えてきたので風邪など召しませんように!
2. Posted by のざわ   2016年10月21日 08:49
オスカーさん、おはようございます。素晴らしいまとめに息をするのを忘れて読みました。26聖人の像は昨年行ってきました。そのそばに平和資料館があって、日本が太平洋戦争で被害者としてだけでなく加害者でもあったことをきちんと展示しています。さて26聖人他キリスト教弾圧の出来事は口では言い表せぬ残酷な悲しい出来事でもあります。為政者から見たら、いろいろな思惑や心配で命を奪う行為まで行ってしまうのでしょうか。衣服をはぎ取るということは初めて知りました。キリストの聖骸布というのを思い出します。キリストが処刑された時身につけていた布が今も残っていて、信徒にとって特別の意味を持つものだと思います。遠藤周作さんが秀吉の弾圧の時代を描いた小説も読んだことがありますが、吉村昭さんの本は読んだことがないので、いつか読んでみたくなりました。
3. Posted by まろゆーろ   2016年10月21日 13:44
何が海外の祭りだと忌々しい思いばかりが募るここ数年です。
ハロウィンやらの衣装を身にまとい街を闊歩する日本人。この人たちがどれだけ日本の伝統や文化、お祭りを知っていることでしょう。
日本のあるべき姿を失わせた諸々の企業の罪は相当深いと思います。

『磔』、とてもよくまとめて下さって、さすがにオスカーさんだと感心しています。
生きるための宗教なのか、宗教のために生きるのか。死したのちにもそんな無残なことをと思うと、本当に神や仏は私たち人間を救えるのかと。
誰も見たことのない天国や極楽という世界は、日々の暮らしや人生のよすがだけではないかと思うことがあります。

長崎の二十六聖人のある場所には足が進まない僕です。大分にもキリシタン公園というのがあって有数の心霊スポットです。化けて出なければこの世に未練が多すぎるのかもしれませんね。救ってくれるはずの神様の許には行けていないということでしょうか。

オスカーさんのまとめを拝見して、時代背景に翻弄させられる信仰の難しさと人間の業をあらためて感じました。
ちなみに次男の大学の先輩は支倉常長の末裔だとか。今風のお兄ちゃんらしいです(笑)
4. Posted by ミューちゃん   2016年10月21日 16:49
5 オスカーさん、こんにちは
鳥取で震度6弱の地震が有ったようです。その後のテレビは観れてないので何とも言えないし、この言い方には語弊が有るかも知れませんが、何で地方ばっかりが地震に襲われるんだて思いますね。あと今年の都内でのハロウィーンイベントは自粛すべきだと思います。それこそイベント中に地震が起こったらシャレにならないですからね。
5. Posted by オスカー   2016年10月22日 08:25
§見張り員さま
この『磔』が吉村さんがはじめて書いた歴史小説なんだそうです。文庫版のためのあとがきには、それぞれの作品を書くきっかけになった出来事がかかれていました。武蔵や回天などの戦史小説もたくさんありますね。ご自身も死を身近に感じる経験が多かったみたいで、それが淡々とした中にも真摯なまなざしを感じる文章に現れているのではないかと思いました。『三陸海岸大津波』はこわくて読めていませんが、読んでおかねばいけない作品ですね。
6. Posted by オスカー   2016年10月22日 08:44
§のざわ様
二十六聖人の処刑実行の責任者は、本当は長崎奉行も兼任していた備前唐津の城主寺沢志摩守広高だったのですが「広高はひそかに切支丹に改宗していた身で、その任務を果たす気にはなれず故意に唐津からはなれていたため、自然と弟八三郎が長崎奉行代理」となってしまいました。兄ちゃん、逃げるなよ…と思ってしまいました。 聖骸布は雑誌などで見たことがあります。「新世紀エヴァンゲリオン」でロンギヌスの槍をはじめて知った無知な私ではありますが…。『塩狩峠』『沈黙』『聖灰の暗号』など読んできましたが、何冊読もうとこれが真実、彼らの気持ちだと本当の意味で理解するのは難しいだろうなと思っています。
7. Posted by オスカー   2016年10月22日 09:05
§まろゆーろ様
大分でも三時半過ぎに地震があったようですが、落下物などありませんでしたか? 昼の揺れも怖いですが、暗闇の揺れは怖さが増します。落ち着かない時間が続きますが、どうぞお気をつけ下さい。
文春文庫の表紙にひかれて手にとりましたが、タイトルも厳しいものですし、正直、購入するまでにはちょっとためらいがありましたが、他の作品も含めて読んでよかったです。自分の知らない時代の人たちが、活字の中では肉体を持ち、それぞれの苦悩やささやかな喜び、楽しみを見つけて生きている……ページ数以上にとても濃密な時間を過ごすことが出来ました。正しい情報や知識があったら、防げた出来事もたくさんあったはずと思いました。今は情報過多でかえって混乱することばかりですね。
8. Posted by オスカー   2016年10月22日 09:15
§ミューちゃん様
鳥取で地震が多いなぁと思っていたら、震度6弱の地震……ええっ!?となりました。これからまだ不安な毎日を過ごされる方が多いでしょう……はやく落ち着いてほしいです。 ハロウィンパレード、あのホラー系コスプレがイヤです……本物の凶器を持った人が紛れていてもわからないだろうし、痴漢やスリも多いみたいだし、遅い時間に小さい子を連れていく親もいるみたいですが、行きたいなら昼のイベントにして~と思います。
9. Posted by 猫ムスメ   2016年10月22日 16:30
私の大好きな旦那様ネタ(笑)。
ありがとうございます。

アメリカにいた時、ハロウィンは大々的にやりましたが、イースターの記憶はあまりありません。やはりハロウィンは派手さがある(仮装)から記憶に残りやすいんですかね。

かぼちゃとタマゴ・・・という比較をしても、イースターがハロウィンの様になるとは到底思えません
10. Posted by オスカー   2016年10月23日 00:02
§猫ムスメ様
オタ息子がハーゲンダッツのパンプキンを食べて「オレの思っていた味じゃなかった」と言っていました。なんでもかんでもカボチャ味だな、と思っていたらダンナがかぼちゃプリンを買って帰宅しました(笑) アイルランドからアメリカに伝わった時点でも変更(?)はあったんでしょうが、日本でさらに変化したような……。そうそう、ホームセンターではX'masツリーがキラキラン☆としていました…まだ10月なのに(~_~;)

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
記事検索
月別アーカイブ