2018年10月23日

稲熟雲便りNo.24:エロスの神の使者

ゴレンジャーのように、赤鬼、青鬼以外の他の色の鬼がいるようです。


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鬼の字が入った西東三鬼の随筆が面白い! オッサンらしい発想を都合よくお耽美になっているところが好きです(笑) 青空文庫にあった『女靴下の話』短いので全文転載します。「エロスの神の使者」・・・素晴らしすぎるフレーズです♪o((〃∇〃o))((o〃∇〃))o♪ 彼の中にいる鬼は桃色なのかしら?



『女靴下の話』西東三鬼


 人間五十年以上も生きていると、誰でも私の経験したような、奇々怪不可思議な出来事に一度や二度はあうものであろうか。恥を語らねば筋が通らない。話は私の朝帰りから始まる。
 およそ朝帰りなるもの、こんないやな気持のものはない。良心の苛責といつてしまえばそれまでだが、もつと肉体的な、たとえばズボンのうしろに自分だけが尻尾をぶらさげて歩いているような、みじめな気持である。さてその朝帰りの玄関に出迎えたのが、思いきや、十年以上も会わない東京の悪友で、のつけのセリフが「おかえんなさいまし、エヘヘ」であつた。どさくさまぎれの朝酒が夕酒になる頃、初老の悪童のろけていうには、輓近二十二歳の愛人を得て昼夜兼行、多々ますます弁じているが、艶運はともかく、このホルモンは羨ましかろう等々。
 さてその晩の汽車で帰る彼を大阪駅に送り、別杯さめやらぬままにウトウトしながら郊外電車で帰宅した。そしてその翌朝、外套のポケットの煙草がほしいと家人にいうと、煙草の代りに指先にぶらさげて来たのが、何と二、三度用いたナイロンの女靴下。それが膝までの短いやつで、ごていねいに両足そろつている――。
 私は不覚にも狼狽した。そして電光の速さで前々夜のおぼろの記憶をたどつたが、彼女には膝までの靴下を用いる趣味はないはずだ。しかし、万一ということもあるから、おそるおそる電話でおうかがいを立てると「ご冗談でしょ」と受話器の音ガチャン。まさにやぶ蛇である。家人に何と弁解したか、これを読まれる方々のご参考に供したいが、実のところ、ぜんぜん身におぼえのないことだから知らぬ存ぜぬの一点張りであつた。
 その真相は今もつて判らない。多分エロスの神の使者が女に化けて、すでに女体に触れた靴下をひそかに私のポケットにすべり込ませ、少しばかり老人を燃え立たせたのであろう。




rohengram799 at 09:26コメント(2)青空文庫  

コメント一覧

1. Posted by トリテン   2018年10月23日 22:23
こんなことが起こったら、身に覚えがなくても、男性はドッキリするでしょうね。
朝帰りを咎める奥さんがカマをかけたのでしょう。^_^;
知らぬ存ぜぬと言いながら、動揺は隠せないでしょうに。

相手もいくつの女性なのか、膝丈のストッキングは「おばん」だものね~
もし本当でも「失礼な!」と言うでしょう。
ハイソックスなら若いけど(笑)
2. Posted by オスカー   2018年10月24日 07:41
トリテン様
三鬼の『美女』には「齢五十をとうに過ぎてゐながら、私と同じ生きものである人間、特に女の人に対する抵抗力が実に弱く、まるで生れたての赤ん坊がたやすく風邪をひくやうに、やられてしまふのです。/はじめ軽いくしやみが一二度出たかと思ふと、アッといふまに肺炎を併発して高熱にうなされるのです。困つたものです。」 とあります。もう本当にはぁですわ (。・´_`・。)

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