トラネコ

2014年11月13日

琥珀雲便りNo.13:秋の猫

『張抜きの猫も知るなり今朝の秋』(芭蕉)


「張り抜きの猫」は張り子の猫のこと。首をぶらぶらさせる張り子の猫が、秋の風に揺らいでいる。この猫も秋立つ今朝の風を感じているに違いない……って、もうスーパーにはお正月飾りが売られている時期にはふさわしくないのですが、藤堂志津子さんの短編集『秋の猫』を読んだので、ちょっと秋に戻ってみました( ̄▽ ̄;)


『秋の猫』『幸運の犬』『ドルフィン・ハウス』『病む犬』『公園まで』の5作品。表紙があまりにも可愛くて買ってしまいました!! 藤堂さんは好きな作家さんなので大ハズレはないと思って……どの話もよかったです。


主人公は女性で年代は30代から40代。独身。ひとりでいる理由はいろいろ。相手に恵まれなかったり、恋人とケンカ別れした直後だったり、離婚していたり……。そんな彼女たちのかたわらには猫か犬がいます。


『幸運の犬』は、ダンナと犬の「親権」争いの話。親権を譲るから慰謝料を5千万円と吹っかけてお金を手に入れ、犬もちゃんと逃亡先に転居。嘘くさくなくなかなかリアルな設定だと思いました。


私が一番好きなのは『病む犬』。最初タイトルを見て、老犬の介護の話なのかな~と思っていたのですが、違いました。ロングコートチワワのマシューと飼い主の話。マシューは雑菌性の腸炎、消化不良、ストレス性の胃腸炎、風邪、外耳炎、結膜炎、肛門嚢炎とまだ生後1年もしないのに病院通いに。ワンちゃんはもちろん痛々しいのだけれど、飼い主の私のフトコロも痛い。貯金はどんどん減っていくし、どうしよう…!


彼女は同じ動物病院で愛犬を亡くしたばかりの男と親しくなり、彼を利用します。だから女は…って思うかもしれないけれど「マシューのおかあさん」になった以上、わが子を見捨てるなんて出来るわけがない。


「・・・思惑とおりに私は津山と結婚した。津山はいい人だけれど、私は相変わらず彼を愛しているというほどではなかった。しかし結婚にはそうした、あいまいな甘ったるさは、さほど必要ではなく・・・」と彼女は淡々とした日々を送るのですが、無事に第一子を出産して母親になるのです。ダンナさんのこの言葉には私もお鼻がツーンとなってしまいました。


「マシューのことは、お父さんも大好きだけど、人間の子供も、なんてかわいいもんなんだろうね、マシュー。マシューの弟だよ」


「夫のその言葉を聴いた瞬間、私の胸のうちに、夫への感謝と謝罪の気持ちが湯水のようにわいてきた。 気がつくと、暖かな涙をこぼしていた。」


犬や猫に限らず、ペットと暮らしている人はみんなダンナさんみたいな、こういう気持ちでいてほしいと思いました。



それから本の中に「ヨモギ色の猫」という表現があって、草餅みたいな色の猫ってなんだ?とおもったら、「キジネコ(焦げ茶&黒:キジの雌に色や柄が似ているためにそう呼ばれる)のことらしいです。「毛色には緑がかった色合いのものもあり、それらは地方によってはヨモギネコとも呼ばれることもある」とWikipediaのトラネコのところに書いてありました。あと「鯖猫(サバネコ)(灰&黒) -サバのような青みがかった縞。地方によっては藤猫(フジネコ)ともいわれる。」というのもあって、うーん、猫の世界の奥深さをまた感じましたわ。



昨日の予告(笑)の『銀色の絆』についてはまた明日にでも(; ̄ー ̄A






rohengram799 at 21:08コメント(6) 
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