人工知能

2016年03月22日

春雲便りNo.22:花鳥(はなどり)

《人工知能(AI)が人間と共同で「執筆」した短編小説が、国内文学賞の1次審査を通過した。》という新聞の見出しをチラ見した後……藤原緋沙子さんの『花鳥(はなどり)』を読んでいます(笑)


この作品では「花鳥とは、春に桜やその他の花の木にやってくる鳥の総称である。」と説明されています。『花鳥の使ひ』という言葉もあるようで、唐の玄宗が天下の美女を選ぶために遣わした使者をさす名称から「男女の仲立ちをする使い」「恋の仲立ち」を意味するそうな。玄宗皇帝の色恋がらみの言葉の多いこと(; ̄ー ̄A


内容ですが……隅田川の汀に羽根を痛めた小鳥を抱えた少女がこの物語の主人公で、後の七代将軍の生母・月光院さま。五代将軍・綱吉の発布した「生類憐れみの令」により、小鳥を助けることも出来ず途方にくれていたところに声をかけたお武家さまが……彼は六代将軍となる家宣でした。実際はもっとドロドロした陰謀や策略、嫉妬などが渦巻いていたのでしょうが、歴史の流れや当時の武家屋敷の様子がなんとなくわかった気になる作品です。本当に歴史に詳しい人には物足りないでしょうね(^。^;)


物語中に「残鶯(ざんおう)」という言葉が出てきます。 春が過ぎてもまだ鳴いているウグイスのことだそう。傷ついた小鳥は鶯ではないかとの行もありました。この老鶯(ろうおう)でなんともユーモラスな一句がこちら!


『老鶯をきくズロースをぬぎさして』(辻 桃子)


ちょうど「ズロース」をぬぎかけていた時に、ウグイスの鳴き声が……思わず手を止めて、耳を傾けてしまったではないか!といささか逆ギレっぽい(笑) 料理中、洗濯中、掃除中にちょっと手を休めた時に聞こえたのではなく、お着替え中にというのが、なんとも言えないおかしさがありますね。その姿を想像しただけで……ストッキングをはく途中なら色っぽさもありますが(片足を椅子にかけているとか)ズロースですし、時期外れのその鳴き声はきっと間抜けだったでしょうし……そしてこれがオヤジがステテコを……ではダメなんですよねぇ。



うぐいすあんパンを食べながら、続きを楽しみたいと思います!





rohengram799 at 10:26コメント(6) 

2016年02月20日

凍雲便りNo.8:小説よ、永遠に

『ひとかどの女の如し山眠る』(守屋明俊)



前の記事に「山眠る」という冬の季語のをチラリと書きましたが、この句の「ひとかどの女」……極妻をイメージしてしまったのは私だけでしょうか?(^^;) こうドッシリした大物感があります。



「一廉の人物(ひとかどのじんぶつ)」(他よりもひときわ優れている人物)って漢字だとこうなんだ~と意外! 「一角」とも書くそうです。



「一廉」の意味には、
1、一つの事柄。一つの分野。
2、ひときわ優れていること。いっかど。
3、人や物が名前に恥じない能力や内容をもつこと。一人前。
「廉」には
1、値が安いこと。
2、心が清らかで欲が少ないこと。
3、かど。すみ。
とかなりバラバラですが( ̄▽ ̄;)……ですが「破廉恥」(はれんち)ってありますよね。「ハレンチ」とカタカナで見ることが多いですが、「廉恥(れんち)」が破れる……「廉恥」は心が清らかで、恥を知る心が強いこと…の意味だそうで、納得! 

「廉恥心」に「羞恥心」……どちらもなくさずに、毎日を過ごしていきたいものですわ。




さてさて……今はダ・ヴインチ編集部編『本をめぐる物語』シリーズ第3弾「小説よ、永遠に」を読んでいます。書き手の立場からも読み手の立場からも「小説」に対するアツい想いが深く静かに流れていて、読んでいてその世界に浸ってしまう……でもこのタイトルからしてこのシリーズは完結なのかもしれない……ちょっと残念( ´△`) 執筆陣は神永学,加藤千恵,島本理生,椰月美智子,海猫沢めろん,佐藤友哉,千早茜,藤谷治(敬称略)。



梅猫沢めろんさんの『ワールズエンド×ブックエンド』は人工知能に小説を書かせる物語なんですが、最後の方にこんな一文があります。


《あたしたちが思っているよりも、この世界には本を読まない人間のほうが多いんだ。作家たちが命をかけようと、AIたちがどんな力で物語を書こうとも、読まれない本がある。》



そうなんだよね……すべての作家さんの本を読みたい!と思ってもそれは出来なくて、発行部数が多い本だけが面白い本、よい本とは限らなくて……自分にとっては一番大切な物語でも他の人にはナニソレ?だったり……でも私は本を読むことをやめないよ!なんて、最近は目がショボショボしてなかなか読み終わらないくせに拳を握りしめたりして(^。^;)



第67回読売文学賞で小説賞を受けた古川日出男さんのコメントが新聞に載っていました。


「言葉でものを作るのは、死んだ人もかつては生きていたと、筆先に受けて伝えていくことだと痛感した。その思いでこれからも頑張っていく」



読み手である私たちはよき受け取り手になり、またそれを言葉にして伝えていかなくては……とまたまた拳を強く握ったワタクシなのでした。



また荒れた週末になりそうです。どうぞ皆さま、お気をつけて!






rohengram799 at 10:36コメント(12) 
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