伊勢ナデシコ

2015年06月29日

草雲便りNo.29:自立と自律

サッカーの女子ワールドカップ、カナダ大会で「日本代表・なでしこJAPANが4強!!」のニュースを見聞きしたからではありませんが(伊勢なでしこの時に読むつもりでした~!)伊吹有喜さんの『なでし子物語』を読んでいます。続編も書かれているようです。

静岡県の天竜川流域の山間にある架空の里・峰生が舞台。そこには江戸の頃から山林業や養蚕業で栄え、事業を広げてきた遠藤家が持つ「常夏荘」があります。広大な敷地には邸宅以外に、ゲストハウスや使用人が住む長屋に蔵も建ち並ぶという、ちょーお大尽さんなおうち(笑)時代は1980年。伊吹さんご自身は三重県の出身だそうで、小さい頃住んでいたところにも山林王の大きなお屋敷があったとか。「歩いても歩いてもそのお家の塀が続いていましたね。身近な存在だったんです。彼らは木を植えるのに二代三代先のことまで考えるので、時代の流れを読むのに敏感な人たちだそうで、今でも各地に山林王はたくさんいると聞いています。」とのこと。実際の土地を舞台にした場合、どの一族か特定されてしまう可能性があるので架空の場所を作ったそうです。○○王とか最近は聞かない…かな? 海運王とか石油王とか外国の大金持ちのイメージしかありません(^。^;)

一族はすでに東京に拠点を移していて、ここ常夏荘は女主人と使用人たちが静かに暮らしています。女主人は遠藤照子、47歳。本家の当主である遠藤龍巳の長男、龍一郎と結婚し長男が生まれますが、夫は10年前に病死。その後息子が大学生になったのを見届けてから、常夏荘で暮らしはじめます。夫との思い出にひたりながら、静かに暮らすため……だったのに、そこにやってきたのは、龍巳が若い愛人に産ませた立海7歳。

病弱な彼は転地療養のために家庭教師の青井(なんかハイジのロッテンマイヤ夫人を思い出すキャラ)と一緒にここで過ごすことに。立海は女の子のような服装で言葉づかいも「なあに」「お夕飯」という感じ。伊吹さんは「小さい頃は男の子よりも女の子のほうが強いので、病弱な男の子には女の子の格好をさせるという風習があったようなんです。私も小さい頃、身近に女の子用のキュロットなどをはいていた男の子がいて、お姉ちゃんのお古を着ているんだなと思っていて。実はその子は病弱で、そうした風習のために着ていたと知った時には、ああ、あの服装には親御さんたちの切実な願いがあったのか、と思いました。その記憶があったものですから、立海の人物像はすーっと浮かんだんです。話し言葉に関しては、ばあやさんが英語も日本語も話せる日系の方で、昭和のクラシカルで美しい日本語を話す人だったのでその影響を受けているということにしました」とインタビューで言っていました。彼の母親については何か訳ありっぽい……まだそこは読みかけなので謎なままです。

もう一人、山の管理をしている使用人、間宮勇吉の孫の耀子・10歳がやってきます。勇吉の息子(耀子の父)はすでに亡くなっており、母は男とかけおち(--;)施設に預けられたりした後に、ここに来ました。耳垢がたまりにたまって聞こえが悪く、また食事も満足に与えられなかったので、とにかく早く食べなきゃ!でがっつく……学校ではイジメの対象になってしまいます。学校でひどいヤケドをしたのをきっかけに立海の家庭教師の青井から「選びなさい。変わる? 変わらない?」と問いかけられます。すべてを諦めるには早すぎる、まだまだ未知なる可能性を秘めた子どもの耀子、学びに意欲を見せた彼女に最初に教えるたのは「ジリツとジリツ」でした。


自立、かおを上げて生きること。
自律、うつくしく生きること。
あたらしいじぶんをつくること。



「イメージとしては撫子の花。花屋にある薔薇や百合のような大輪の花とは違って、撫子はどこにでも咲いている小さな花だけれども、そこで精いっぱい天をあおいで咲いている。この花のように、撫でたくなるような愛おしい子たちの話だと意識して書いていました」  

三人がそれぞれの想いを語るみたいなかたちになっているので、感情移入もしやすく読みやすいです。まだバブル景気にわくこともなく、一億総中流なんていってもまだまだ番地方と都会、貧富の差もあり、職人気質の人たちがたくさんいた時代……懐かしいような、でも今も抱えている悩みに変化はないような……作者インタビューはコチラです。

http://www.quilala.jp/fbs/old_from_bs/pu_interview54.html


明日からまた梅雨空に戻りそうですが……「自由・自主・自尊・自律」(どこかできいたような…しかしワタクシは帝国ファン!)でまた1週間頑張りましょう o(`^´*)




rohengram799 at 10:40|この記事のURLComments(6)

2015年05月13日

碧雲便りNo.13:東京ホタルと伊勢ナデシコ

まだ少しホタル観賞には早いですが『東京ホタル』を読みました。中村航・小路幸也・穂高明・小松エメル・原田マハのアンソロジー。


各作品に共通するのは、隅田川のホタル。7年振りに会った元恋人との話「はぐれホタル」・戦直後の少年とアメリカ兵の話「蛍の光り」・東日本大震災から10年後経た高校の同級生の話「夏のはじまりの満月」・定年後に妻に先立たれた祖父と孫の話「宙色三景」・彼氏と温泉旅行に出かけた娘が音信不通の母親と会う「ながれぼし」……「再会」も重要なもうひとつの設定かも。


私は孫に終戦後のアメリカ兵との交流を語る「蛍の光り」が一番好きかな~おじいさんが言葉を選んで当時の話をしてくれる場面は、同じくらいの子どもたちにも読んでほしいと思いました。そして蛍のひかりを綺麗だと思う気持ち、虫の音色を愛でる感性をずっとなくさないで大事にしてほしいです。原田マハさんの母娘の話はテッパンですね。せつなかったです。



《東京ホタル》は実在のイベントで、これに合わせて発行したのかも…。自然と共生できる都市にという願いを込め、隅田川に10万個のホタルに見立てた「いのり星」を流すというもので、5月の末に開催されていたようですが(2012年から)昨年は諸事情で中止、今年もないみたいですね。なんかトラブルでもあったのかしらん? 


http://tokyo-hotaru.jp/



ホタルというとホタルイカ!北陸新幹線で富山に行けなくても有楽町駅すぐにある交通会館内に富山の物産館「いきいき富山館」に行けば、産卵前のプリプリのほたるいかを、国産醤油と味醂、砂糖のみで漬けこんだ「沖漬け」をはじめ「赤作り」や「スモーク」なども試食出来る(^-^)v……期間限定で今日までみたいですが(O.O;)(oo;)



この前、香取神宮に行った時に国立歴史民俗博物館が宝物館入口にあったのでチラシをもらってきたことを思い出し、あらためて見ました(^o^;) 佐倉中学校の隣に別館みたいに「くらしの植物苑」という建物があります。毎月観察会をしているようです。現在、見ごろの植物の写真の中に「うらめしや~」的な花を発見しました。なんだ、このモシャモシャしたヤツは……名前は伊勢ナデシコ! ナデシコ? 私の知っているナデシコと違う~このまま海中をさ迷っていたらクラゲみたい(;゜∀゜)


《伊勢ナデシコ》
https://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/plant/flower/2014/f1406/index.html


変化朝顔とか古典菊はブログなんかで見たことがありますが、これがナデシコ(~O~;)だなんて……自分の知っていたモノと違い過ぎてショーゲキでしたが、イイモノを見たぞ( v^-゜)♪な気分にもなりました。




朝6時過ぎ、東北での大きな地震に驚きました。お住まいの方々、皆さまのお知り合いの方々、ケガなどされていないでしょうか? こんな大きな余震があるかと思うと不安ですが……台風に地震、自然災害に備えあれば憂いなし、で気をつけていきましょう。平穏な1日になりますように。





rohengram799 at 08:38|この記事のURLComments(8)
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