大塚楠緒子

2017年05月11日

起雲便りNo.11:女流作家

本屋さんで『なぞり書きで楽しみに女流作家の名文』というのをパラパラ見てきました。最近は文字を書く、ということが少なくなり(自分の字の下手さにウンザリする)こういうなぞり書きとかいいかも~と思って・・・見ただけで買ってないのですが(笑)知らない作家・作品があり、帰宅してから調べたり・・・大塚楠緒子さんの「お百度詣」は与謝野晶子の「君、死にたまふことなかれ」と並ぶ反戦詩だそうです。



「お百度詣」 大塚楠緒子

ひとあし踏みて夫思ひ
ふたあし国を思へども
三足ふたたび夫おもふ
女心に咎ありや 

朝日に匂ふ日の本の 
国は世界に只一つ
妻と呼ばれて契りてし 
人もこの世に只一人

かくて御国と我夫と
いづれ重きととはれなば
ただ答へずに泣かんのみ
お百度詣ああ咎ありや



大塚楠緒子(くすおこ/なおこ)が、日露戦争に出征した夫の無事を祈った作品。小説は漱石に、和歌は佐々木弘綱・信綱に、絵は橋本雅邦にと、経済的にも恵まれた環境にいたようです。夏目漱石が四国松山に流浪したのは、楠緒子に失恋したからだという伝説もあるとか。新聞に連載小説を執筆、翻訳から絵画、ピアノなど才色兼備の彼女に、あまりにも早い死が訪れたのは35歳の時。漱石はその訃報に「あるほどの菊投げ入れよ棺の中」という句を詠んだそうです。この句は知っていましたが、そうだったのか~と、読んだ時に激しい情熱が感じられた理由を納得しました。



また清水紫琴の『こわれ指輪』も全くしらなかったのですが、青空文庫(無料)で読みました。なぜ彼女はこわれ指輪、玉のない指輪をしているのか? 男尊女卑というか、儒教的な教育を受けて、とにかく旦那さんに尽くし、姑には逆らうな、耐えるのか当たり前、みたいな風潮の明治時代。独身生活にあこがれていたけれど、結局は父親に強制されて結婚。しかし結婚後、夫が不倫しているのを知ってしまう。今なら即離婚案件ですが、結婚とはそういうものだとあきらめ、2年も忍従します。女権論について知るようになり、旦那さんを変えようと頑張りますが、夫は変わらず離婚することに。


・・・私はひたすら世の中の為に働こふと決心しましたが、私は記念の為にこの指環の玉を抜き去りまして、かの勾践(こうせん)の顰(ひそみ)に倣(なら)ふことにはならねど、朝夕これを眺めまして、私がこの玉を抜き去りたる、責めの軽からざることを思ひまして、良しや薪に伏し肝は甞なめずとも、是非ともこの指環の為に働いて、可憐なる多くの少女おとめ達の行末を守り、玉のやうな乙女子たちに、私の様な轍を踏まない様、致したいとの望みを起こしたのでござります。
 とはいへ今ではおひおひ結婚法も改まり世間に随分立派な御夫婦もござりますから、それらの方のありさまを見ますと、なぜ私は、ああいふ様に夫に愛せられ、また自らも夫を愛することが出来なかつたのかと、この指環に対しまして、幾多の感慨を催す事でござります。・・・




なんだかいろいろ考えさせられた話でありました。やっぱり買ってみようかな(^^;)))


 





rohengram799 at 18:21|PermalinkComments(6)