大沼紀子

2014年09月10日

白雲便りNo.10:思い出のてのひら

『新涼や白きてのひら足のうら』(川端茅舎)


昨日は満月を眺めていたのに、今日はまた夕方から雨……ちょっとむし暑いです。「新涼(しんりょう)」という季語、秋の初めの涼しさ、初秋の涼気を表すそうです。なんか夏の初めのさわやかな空気みたいに思いますが、違うんですねぇ!



読みかけの本を無くしてしまったので、今日から『てのひらの父』を読んでいます。作者は『真夜中のパン屋さん』シリーズでおなじみの大沼紀子さんです。内容は……世田谷区、松陰神社前駅から徒歩15分。タマヨさんがひとりで暮らすには広いので、誰かに住んでもらおう!ということで出来た女性専用の下宿「タマヨハウス」が舞台。弁護士を目指す涼子、アパレルデザイナーとして働く撫子(なでしこ・でこちゃんと呼ばれている)、そして同僚の不正のとばっちりでリストラに遭い、求職中の柊子。ある日、都合で長期不在になるタマヨさんの代理でイトコのトモミさんが管理人としてやってきました。 名前からして女性と思っていたら、ハチという犬を連れたちょっと小難しい顔の男性だった( ; ゜Д゜) なんやかやと生活していく中で、それぞれの家庭の事情がわかるのですが、共通点は「父親に関すること」です。娘と父親の関係、まぁいろいろありますよね。どんな結末になるかはわかりませんが、娘の立場になったり、親の立場になったりして読んでいます(((^^;)



ウチは魚屋だったのですが、「マグロ」は、目が黒いので「眼黒(めぐろ)」→「マグロ」といわれるようになりました……という語源を読んで、目黒のサンマじゃなくて、眼黒のマグロ!と笑ってしまったのですが、両親がいたら「知ってた~?」「漢字の鮪の有の字は「外側を囲むっていう意味なんだよ」「大きく外枠を描くように回遊する魚がマグロなんだよね」とか話をしていたかも……なんて思いました。



魚つながりで…明日は二百廿日ですが、二百十日もありますよね。徳川幕府の暦編纂係の渋川春海は釣り好きで、二百十日の日にも品川の沖に舟を出そうとしたそうです。
その時、老漁師が海上の一点を指して「今日は立春から数えて210日目だ。私の50年来の経験によれば、このような日は午後から海は大荒れになるから、釣りに出るのはよした方がいい」と助言したそうです。その日は大暴風雨に……! 春海はこの気象現象を長く研究して、貞享暦(1684)を編纂したときから二百十日を記載したと伝えられているそうです。



長年の経験と勘で海に出る漁師さん、国語の教科書に載っていた『茂作じいさん』を思い出します。


茂作じいさんは歯が一本もない

茂作じいさんは95才だ

茂作じいさんは1日家の前で

沖を眺めている

時々古ぼけた望遠鏡を覗いては

もごもご何か呟いている



暗記していないのが残念~この詩の全文を探しているのですが、子どもたちの教科書には載っていなかったんですよね。これを読むと祖父と『老人と海』を連想したものです。



明日は晴れるでしょうか? よいことがたくさんある1日になりますように。






rohengram799 at 21:53コメント(6) 

2013年07月30日

入道雲便りNo.10:プロ乙女の人生

今日はテレビドラマ化もされて人気の『真夜中のパン屋さん』の作者である大沼紀子さんの『ばら色タイムカプセル』を読み終わりました。


13歳の家出少女・奏(かなで)が流れ着いた場所は、海が見える町にたたずむ不思議な老人ホーム「ラヴィアンローズ」。咲き誇る薔薇が自慢のこの施設で、年齢を詐称して働きはじめた彼女は、薔薇園に隠されたある噂を知ることに…そうです、お決まりの「あんなに綺麗な薔薇がたくさん咲いているのにはきっとヒミツがある、死体が埋まっていてソレを栄養にしているのよ!!」パターンです(笑)。40年以上の時を超えて明かされることになった秘密。まわりの顔色を伺いながらわりと良い子で過ごしてきた彼女には貴重な夏休みになったかも。パン屋さんよりこっちの話の方が私は好きですね~!!


ホームにいる、かつての乙女たちは、特に介護が必要というわけではないので、それこそ寄宿舎にいる女子高生のノリで「きゃいきゃい」「きゃぴきゃぴ」しております。特に歌舞伎大好き三人娘は精力的に活動しています。好きなものがあるって精神をいつまでも若く保ってくれますね。それぞれに家庭の事情があり身体的な衰えは隠せないけれど、それも含めて人生を楽しんでいる感じ。これが男性入居者メインの物語だったらどうなるんだろう?「少年の心を失わない人」と言えばカッコいいですが、実生活でコレを貫いていたら女性以上に「いい年をして~」と言われそうな気がします(--;)


自分もホームで暮らしながら、両親が別々の介護施設にいる登喜子さん、父親の葬儀に母親を出席させるのにもひと苦労です。母親は自分の子どももわからない、ダンナのことも忘れている状態なので……。でも車椅子で参列し遺影を見て「あなた…」と泣きくずれる場面には、いろんなイヤな出来事があったとしても、もう逢えないのだというかなしみは溢れてくるのかなぁ…と思いました。この話のようにすべてがドラマチックにはいかないでしょうけれど、人の想いってとっても複数で不思議だと思いました。私はボケたらダンナも子どもたちも全部どこかにいってしまう気がする……恨まないでね(~_~;)


奏ちゃんはストレスで白髪になっているのですが『ベルばら』で王妃さまが逃亡に失敗し一晩でブロンドが白髪に…とありましたが、実際は一度ひ白髪にはならず徐々になるとか。しかし、13歳で……(´д`)どんだけストレスためたのよ~!!近くの中学で合唱コンクール練習の歌声に耳を傾けていた彼女に、男の子が話しかけてきて、彼もホームの手伝いをするようになるのも「ああ、青春」的で、ツッコミたくなりますが、そこはガマンしてね(笑)私は、もうそんな出来事も微笑ましくサラリと読めるオバサンになりました。


最後に彼と母親のエピソードが載っているのですが(奏ちゃんは父子家庭、彼は母子家庭)「好きな人でもできた?」ときかれ、ちょっと口悪く照れをごまかす息子に「そういうところ、お父さんにそっくり」と言う場面があります。そして「子供ってタイムカプセルみたいね」「なんだか色々と、思い出しちゃうわ」と。子どもだけでなく、親族だけでなく…自分の好きな人、好きだった人がいなくなってしまった後には、その人の面影が残るもの、ちょっとしたしぐさや言葉、出来事に過去に引き戻されることってありますよね。そこにとどまることは出来ないけれど、懐かしく思い出すことは出来る。この物語に出てきた若いふたり(笑)も、60歳70歳になったら何気ない風景の中に10代を思い出すのかも…。


以前、平井堅さんが歌っていた『The rose』を聴いて感動したのですが、今日はまたこの曲を聞きたい気分です。目指せ、永遠の『プロ乙女』!!


明日で7月も終わり!猛暑に豪雨、あちこちで被害があり……特に水害にあわれた方々には(後片付けの大変さをちょっとだけですが体験した私)心身の疲労感がどんなに積み重なっているか…。1日も早く落ち着いた状況になりますように。





rohengram799 at 14:20コメント(6) 
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