小池真理子

2017年12月14日

暮歳雲便りNo.14:愛を語れば

♪愛をつぐなえば別れになるけど こんな女でも忘れないでね・・・


これはテレサ・テンの名曲『つぐない』ですが、アンソロジー『短編伝説 愛を語れば』を読みました。純愛に不倫、結婚披露宴での問題アリアリなスピーチや、怪談めいたもの、ホラーテイストのものなど、鬼籍に入った方から現在バリバリの作家さんたち、19作品です。

https://honto.jp/netstore/pd-review_0628704978.html


なかには飽きてしまうのもありましたが、トップバッターは江國香織さんの「ごはん」。一人旅に出たくなったアナタは、夜、会社から帰ってきたダンナさんにまっさきに告げます。


「九月に旅行にいってくる」と・・・さぁ、ダンナさんはなんというでしょう? 普通なら「えっ、ひとりで行くの?」とか「どこに行くの?」とか「何日くらい?」とかだと思うのだけれど、この話のダンナさんは、ぽかんとした顔でこう言ったのです。


「じゃあ、ごはんは?」



・・・うわぁ!となってしまった! まぁダンナさんがごはんの用意がしてあるかどうかをとても気にするキッカケはあったのだけれど、それでもなぁ・・・と思ってしまった。



ごはんの支度をするのは面倒くさい。私は料理も下手だし、頑張って作っても残されると腹が立つし、自分が食べなくなくても用意しないといけないのがイヤ・・・ワガママですみません。しかし、最近は料理をしないってボケるよね、と思うようになりました。手を動かさないし、調理や片付けの手順とか考えることもなくなるし・・・。



食べ物関連では小池真理子さんの「食卓」もよかったです。


「寂しい、というのではない。切ない、というのでもない。孤独、というのでもない。長く生きていればいるほど、わからないことが増えてくるのを女は感じる。
年をとったら、いろんなことが見えてくる、はっきりしてくる、賢くなる、というのは大嘘だ、と女は思う。としを重ねるほど、ものごとが余計にわからなくなる。混乱する。
若い頃、真実だと思っていたものがそうではなくなり、わかったつもりになっていたものが、実は何もわかっていなかったのだと気づかされる。」(p202)



読みながらうなづいてしまいましたわ。



あと中島らもさんの「微笑と唇のように結ばれて」では画廊を経営している男が主人公で、レイトンという画家の作品についての描写があり、実在するかのかと思って調べたら、いました。イヤだわ、物知らずで恥ずかしい。


「お手玉遊び」も美しい作品だ。透けるような薄絹をまとったギリシアの少女が、牛の趾骨(しこつ)の小片をあやつってお手玉遊びをしている。異様に紅潮したその頬は、お手玉に恋の占いでも託しているせいではないのか。(p294)



どんな絵なの~?とワクワクしていたのですが、私には・・・おやぢ心をくすぐるものは今一つありませんでした。趾骨も空中浮遊している紙くずにしかみえなかった(´~`;)   皆さまの感想は?

http://www.hitsuzi.jp/2011/03/1808sheep.html






rohengram799 at 09:25コメント(6) 

2017年09月21日

竹酔雲便りNo.17:欲望ZERO

この前、本屋さんで『スキンシップゼロ夫婦』というコミックエッセイを買いました。


「奥手すぎて、手すらつないでくれない夫・みーさんとの シャイすぎる夫婦生活を赤裸々に綴る。 」と内容紹介にあっだけれど、最後には「今はラブラブ💓💏💓」になっていると思ったのに・・・ずっとかよ!でビックリするやら呆れるやら。



・部屋が別々の新婚旅行。
・一緒に寝ることを拒否された夜。
・他の女性への妬み、ひがみ、みじめな気持ち。
・義母からの不妊症疑惑。
・性欲をただただがまんする日々。
・パート先での子なしハラスメント。
他いろいろ(´・c_・` ;)


絵柄が可愛いので、なんかごまかされて「ふたりがいいなら」って思いかけたりしたけど、スゴくいい話っぽくまとめられているけれど、ちょっと問題ありじゃないかと。ダンナさんも奥さんも「歪んでいる」という印象で「ふたりを応援するします!」という気持ちにはなれなかった・・・・子どもが欲しくないとかいう以前の問題。奥さんの方はお付き合いした人もいるんだけど、なんだかなぁ・・・心身ともに成熟した大人じゃないよね、って思いました。なんでこのダンナさんは結婚したのか、わからない。最初は笑えたりしたんだけど。



https://www.wani.co.jp/sp/event.php?id=5401




小池真理子さんの『欲望』には交通事故で下半身不能になってしまった男性が出てくるのだけれど、身体と心が結びつかず苦悩していて・・・物語の人物と実在の人を比べるのもおかしいとは思いつつ、なんだかなぁ、な気分になってしまったのでした。





rohengram799 at 07:55コメント(6) 

2015年11月27日

暁雲便りNo.33:心はあなたのもとに

《「悪霊はらう」糖尿病の7歳、治療させず死亡》……新聞にまた痛ましい見出しが……。


体を触る行為を「治療」と称し、重い糖尿病を患っていた宇都宮市の男児(当時7歳)に適切な治療を受けさせずに死亡させたという栃木の会社役員の男(60)。男児の家族によると、男は「悪霊をはらう成功報酬」などとして、両親から200万円以上を受け取っていたとか。男は男児が1型糖尿病と診断されていることを知りながら、治療に不可欠なインスリン注射をさせずに男児の足や腹を触るなどの行為を繰り返したことで今年4月男児を殺害した疑い。病気治癒にお祓いとか薬や病院以外のものに頼りたくなる気持ちはわかります。その気持ちを利用してお金をまきあげるだけでなく暴行とは……。


テレビでも1型糖尿病について解説していましたが、膵臓のβ細胞が壊れてしまい、まったくインスリンが分泌されなくなってしまうのが1型糖尿病。インスリンを体外から補給しないと生命に関わるため、インスリン注射を欠かしてはなりません。私たちがよく知っているのは2型糖尿病という、遺伝的に糖尿病になりやすい人が、肥満・運動不足・ストレスなどをきっかけに発病する方ではないでしょうか。1型糖尿病を発症するのは子どもや若い人に多く、最初は風邪に似た症状が出るそうです。



『心はあなたのもとに』 (村上龍)というタイトル買いした本を読んでいたのですが(解説が小池真理子さんなのも決め手でした)その主人公の恋愛対象となる女性がこの1型糖尿病患者でした。


「恋の対象というのは、常に不在なのではないか」……そう書いたのは、フランスの哲学者、ロラン・バルトだったと思う。/恋する相手が不在であれば、恋ごころはかきたてられる。恋人が遠い外国に行ってしまったり、重い病で入院していたり、その他、様々な事情で触れたいと思う時に触れられず、話したいと思う時に話せなくなると、私たちの恋はより深度を増す。恋人に向けた想いがいっそう強まる。


小池真理子さんの解説はこんな文章から始まりました。主人公というか物語をすすめるのは西崎という50歳を少し超えた、「外資で鍛えられたエリート」投資家で、2度目の結婚をした7つ年下の妻との間ふたりの娘がいます。夫婦仲はよく、娘たちはすくすく育ち、家庭は円満で何の問題もない。


そんな金に余裕が有りすぎる男が、いろいろ遊び歩いているのに風俗で働いていた香奈子という離婚歴のある女性と特別な関係を持ちます。パトロン的な感じですかね? 風俗をやめさせ、銀座のホステスになり、管理栄養士を目指し専門学校へ通わせたり……入院費も負担したり……しかし病状はアップダウンを繰り返し、結果的には悲しく寂しい結末に(これはもう最初からわかっています)。


西崎に対してイヤな男と思う人もいるでしょうが、私は病人の気持ちやその人との接し方(というと語弊があるかもしれませんが)についての描写はうんうんと納得するものでした。心療内科の医師のアドバイス的なものも素直に受け入れられたし……エロエロ場面が思ったより少なく、ビジネスと恋愛の話のバランスもよかったからかも。彼の両親や家族についてはこんな人たちもいても不思議ではないよね…って感じ。こんな世界の人たちと全く知り合いではないのに、リアリティがあるというか……さすが大物作家は違うなぁと(笑)



『誰かを大切に思う気持ちは、何かを変化させ、いつか必ず相手に届く。』



この言葉にお鼻がツーン!となったワタクシです。ラストはちょっと…という人がいるかもしれませんが、私は好きです。『美しき一日の終わり』のねーさんがあまりにも世話焼きでうっとおしい愛情だったのに比べて、こちらのふたりの方が純度が高い気がしました。あくまで私の感想ですけど(^o^;)






rohengram799 at 23:50コメント(10) 

2015年11月24日

暁雲便りNo.30:美しき一日の終わり

昨日は「いいふみの日」それを意識したワケではないでしょうが、マイナンバーが届きました~まだかな、まだかな~と思っていたので、とりあえずホッとしました。でも配達のお兄さん、元気がありませんでした(-_-;)

そして一昨日は「いい夫婦の日」でしたが、長年連れ添った夫婦なのにう~ん…ダンナさんかわいそう……と思う本を読み終わりました。タイトルは『美しき一日(いちじつ)の終わり』(有吉玉青)。確かに♪ふたりのため~世界はあるの~な感じでしたし、読む人によっては「純愛」なのかもしれないですが、私的には「エーッ、なんでそんな感想になるの?」……ひがみっぽいのかしら( ̄0 ̄;)

美妙(みしょう)が15歳の時に、父親が秋雨(しゅうう)という8歳の男の子を連れて帰ってきます。戦争未亡人となった後輩の奥さんにあれこれ気をつけていたら……というお決まりパターンですね。その女性が亡くなったので、引き取られたのですが、美妙の母はすんなり受け入れられるワケがない! 寒々しい書庫を部屋としてあてがい、母屋で寝ることもさせず冷たい仕打ちを繰り返します。美妙は姉として彼を守り支えなくては!と思うのですが……。

秋雨は出来過ぎた弟。頭がよく、自分の立場もきちんとをわきまえています。姉への思慕を抱きながら2度結婚しますが、どちらもうまくいかずに、最後は病気に。姉も同じように複雑な愛情を持ちながら、弟に当て付けるように見合いを繰り返し、婿養子になってくれる男性と結婚。祖父の起こした食品会社があるので、貧しさなど知らないお嬢様のまま(働いた経験はあるけれど)老いても美しく……この辺りは正直イライラします。美しくあろうとするのは、歳の離れた母親の違う弟のため、っていうのがバリバリ伝わってくるので、なんか不快になります。彼女が独身を通していたらまた違うんでしょうが、表向きは良妻賢母ですからね。

母・歌子、美妙、娘の京香、孫の里桜と女性四代の物語は、昭和から平成への時代の移り変わりも描いています。日米安保、ベトナム戦争、学生運動など政治がらみの出来事や資生堂パーラーやヘップバーンカット、アイビールックとか「あった!あった!」と妙にコーフンした部分も(;^_^A またお見合いの場面などに「着物」が出てきます。「しつけは、添い遂げる人に切ってもらうものだ」とあって、そうなんだ~初耳!だったり……着物やドレスが受け継がれていくのはステキだなぁとは思いますが。メロドラマ要素も多いかな~でも『真珠夫人』の方が絶対!純愛だよね!と思うワタクシ(゜゜)

ふたりが出逢ってから50年余りの月日が流れ、両親、夫を亡くし今や70歳!になった美妙。取り壊すことが決まったかつて二人が共に暮らした家で、秋雨と再会し庭を眺めたり、書庫を開いての昔語り………「霧の香」「光清けし」「色なき風」「天、泣す」「浮き雲」「夕紅」「空火照(そらほでり)」「月夜影」と過ぎていき『美しき一日の終わり』には何が……それは読んでのお楽しみということで、あえて書きませんが、私には「はぁ~Σ( ̄皿 ̄;;」な結末とだけ…!


この本を読んで長らく忘れていた里中満智子先生のマンガ『あすなろ坂』を思い出しました。会津藩主であった有馬家に嫁いだ芙美、そして彼女の子供からその孫、ひ孫と幕末から昭和にかけての有馬家の女性の生涯を描いたもので、ナゼか兄の本棚にありました( ̄▽ ̄;) 芙美は違う男性の子を身籠っていたのですが、ダンナさんになった武史はそれを苦悩しつつ受け入れ……まぁいろいろあるんですが、こちらもダンナさんが先に亡くなり(´;ω;`) 芙美が亡くなる時に「あなた、迎えにきてくれたのね」的なことを口にするのですが、それが初恋の人かダンナなのかは明確にしていなくて……私はあのいいダンナさんであってほしいと思っています。

あと『レモン・インセスト』という小池真理子さんの短編があるのですが、こちらは生後間もなく誘拐され行方不明になっていた弟と24年振りの再会を果たした姉とのお互い罪を犯すまいとする物語。オタ息子が「女が書くのはこれだから…(-。ー;)」と言った(笑)私も小池さんにしてはちょっと安易な気がしたラストでした。


朝からダラダラ書いてしまいましたが(休みなので)今日が皆さまにとって「美しき一日」になりますように……(* ^ー゜)ノ





rohengram799 at 09:25コメント(6) 

2015年04月03日

桜雲便りNo.3:女がそれを食べる時

今日は風が強いですね。ハクモクレンの木はハダカ状態になり、せっかく咲いた桜もハラハラと舞っています( ´△`)

前に『肉小説集』の話を書きましたが、今日の新聞コラムにこんな話がありました。明治天皇が肉類をあまり召し上がらない。参議の大久保利通は滋養を気遣い、もっと肉食を、と進言した。天皇がお答えになる。「菜食の徒にも、空海があるぞ」。……探せば『菜食小説』もあるのかしら?(笑)


♪春には春の恋がある~そろそろおまえとお別れだ~

これはアン・ルイスさんが歌っていた『女はそれを我慢できない』ですが(笑)『女生徒』と並行して『女がそれを食べるとき』を読んでいます。9人の女流作家が描く食と愛についてのアンソロジー。表紙はあわい水彩画でふんわり・ほんわかしているので、あまぁ~い掌説を期待する方もいるかもしれませんが、作家陣にウッ( ̄0 ̄;となることでしょう。

井上荒野・江國香織・岡本かの子・小池真理子・幸田文・河野多惠子・田辺聖子・山田詠美・よしもとばなな……内容が薄味ではないのはおわかりですね(^。^;) 小池真理子さんの『贅肉』(スゴい話でしたわ)と幸田文さんの『台所のおと』(なぜか“台所ノート”と発音してしまうのですが、台所の“音”です)は読みたかったのでラッキーでした。『台所のおと』に「若さというのは、いつでもすぐ今以上に、騒ぎ出せる下地があることなかあ、などと自分の若い頃も思い出させられたのであり…」の一文にフムフムしたりして……。

食べ物と言うと辻村深月さんの『ツナグ』には「卵焼きおにぎり」が出てきました。

「普通の家は海苔で巻くおにぎりを、うちは卵で巻いた。ふりかけを混ぜて握ったご飯を、小麦粉と、溶いた卵につけて、一面ずつフライパンで焼いて固める。そうすると、表面が卵で黄色くコーティングされたおにぎりができる。」

森絵都さんの『気分上々』の中の「ブレノワール」にはこんな言葉がありました。

「胃袋の中身が変わらないから中身も変わらないんだ」

夫婦が似てくるのは毎日同じものを食べているからだ、という話や頭がよくなる食べ物の話を思い出しましたわ。このタイトルの「ブレノワール」は黒麦のことで、これを使った固いガレットを中心にしたは母と息子の物語。最後はせつない……ρ(・・、)。


黒麦で検索したら「 ライムギの別名」とありました。ライ麦と言えばサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』(原題The Catcher in the Rye)。読んだことはないけれど『かもめのジョナサン』と同じくタイトルは知っている名作(笑) 別邦題が「危険な年齢」「ライ麦畑の捕手」とあって、イメージが……と思いました(~_~;)

食べ物の話を書いていたら、お昼ご飯の時間になりました。朝ごはんの残りをかき込むように食べて、仕事にいってきま~す(  ̄ー ̄)ノ




rohengram799 at 12:15コメント(12) 
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