日御子

2015年11月22日

暁雲便りNo.29:日御子

昨晩は『日御子』(帚木蓬生)の世界にどっぷり浸かっていました。最初は「あれ、ヒミコってどんな漢字だっけ? 卑弥呼じゃないんだ…」くらいだったのですが、邪馬台国→弥摩大国、奴国→那国と良字というとヘンですが、こちらが見下された感のない文字は見ていて(読んでいて)気分がよかったです!

遠い昔、大陸からこの倭(今の日本)という地に移住してきた<あずみ>の一族は、使譯(しえき、今だと通訳かな)を一族の天職として生きています。その<あずみ>は各地に分散移住して行っても、使譯という仕事に就いているのは同じ。漢字は安住だったり安曇だったり…変わります。


代々、使譯を務める<あずみ>一族の子として生まれた針(しん)は、病床の祖父・灰から、那国が漢に使者を遣わし「金印」を授かったときの話を聞きます。それは、「倭」の国が歴史に初めてその名を刻んだ出来事。それから十数年が経ち、再び漢へ遣いを出すことになり、針は伊都国の使譯として正式に任命されます。5隻の船にたくさんの生口(奴隷)を乗せ、漢の都・洛陽へ。その後「倭国大乱」「邪馬台国」そして「東遷」へと、代々の使譯たちの目を通じて日本の歴史が語られます。


史実をもとにした創作ではありますが、全文が子や孫などに語るかたちをとっているので、自分も祖父から話を聞いているような気持ちになります。2???3世紀の時代、政治と闘争、諸国の繋がりなど確かにこうだったのかも……と思いました。ウチのダンナが『三國志』のドラマを録画していて、ちょうど《死せる孔明、生ける仲達を走らす。》の回を見た後に本の続きを読んだら、その話が出てきて「Nice!」と思いました!(笑) ちなみに私はドラマの内容はほとんどわかりません。三國志ってムズカシイ( ̄~ ̄;)


そして、全編を通し語り継がれるのが、4つの教えです。「約束は守り、恩や親切を受けたならば、返さなければならない。」「恨んで戦うと、天の恵みが受けられなくなる。」「絶え間ない良い習慣があれば、才能など何の重みもない。」「仕事の中味を変えるのが、骨休めなのだ。」……生口として異国で一生を終えることになる子どもたちも、この教えを支えに生きていくのです。



登場人物の名前の意味や日御子の生涯など、もしかしたらこうだったかもしれないという浪漫もあり、人として毎日をどう生きるかという人生訓もあり……上下巻で最初は歴史物だし、読みきれるかな…という不安もありましたが、読破して満足しました。



明日は雨になりそうですね。どうぞ皆さま、体調をくずされませんようにお気をつけ下さいませ。





rohengram799 at 19:45|PermalinkComments(8)