皆川博子

2016年05月21日

香雲便りNo.22:片想い

♪あの人のことなど もう忘れたいよ だって どんなに想いを寄せても 遠く叶わぬ恋なら……


う~ん、浜田省吾の『片想い』はやはりたまらんのぉ……と思う、おやぢなワタクシ、このタイトルの作品を読んだからなのですが、その感想の前にちょっと寄り道をさせて下さいまし。

ハマショーの歌は以前『愛しい人へ…』(カテゴリの創作 小説をご覧下さい)で使わせてもらいましたが、トドロキくんのクミコへの「片想い」エピソードも入れたかったんですよねぇ……まとまりがなくなってしまうので、そのあたりを匂わす感じの文章だけにしてしまいました( ̄▽ ̄;) 

「すごく好きな曲のひとつで、女の子が朝、出かけていく姿をベッドの中から見ていて、それを素直に書いた。男の子と女の子が同棲していて、ふたりとも働いていて、女の子の方が朝早い電車で出かける(浜田省吾事典p234引用)」

という「4年目の秋」に関する記事を読んで、私は女の子が19歳で家を出てから4年経った23歳の今を第三者的視線で書いたものだと思っていたので、えっそうだったの(;・ω・)と……意外に思いました。同棲しているという発想は全くなかったんですよねぇ……。歌詞はこちら→http://j-lyric.net/artist/a0011b4/l00138c.html



『オーブランの少女』(深緑野分)文庫本を読みました。深緑野分(フカミドリノワキ)さんの“少女”をテーマにした短編集です。表紙は単行本の方がこの本の内容にあっているような気がしました。

表題作のオーブランは色鮮やかな花々の咲く、比類なく美しい庭園の名前です。ある日、異様な風体の老婆に庭園の女管理人が惨殺され、その妹も1ヶ月後に自ら命を絶つという痛ましい事件が起きます。殺人現場に居合わせた作家の“私”は、後日奇妙な縁から手に入れた管理人の妹の日記から、オーブランの恐るべき過去を知るのです……!その他「仮面」「大雨とトマト」「片想い」「氷の皇国」と、少女たちの危うさ、眩しさ、したたかさなどを描いた作品が並びます。どの作品も味わい深くオススメ!

「片想い」は昭和初期の東京が舞台になっています。寄宿舎で同室になった相手に憧れを抱く女学生のお話。微妙な気持ちのすれ違いや揺れ動く乙女心……謎解きが楽しいのではなくて、その日常や関係にふぅ~(///∇///)となってしまうのです←エロい場面があるワケじゃないんですよ!!

皆川博子先生の『倒立する塔の殺人』が太平洋戦争末期のミッションスクールを舞台にした作品で、なんとなくソレを思い出すなぁ~と思っていたら、解説に作者もこの作品が念頭にあったと書いてあり、やっばり!(笑) 野分さんの祖母も女学校出身の上品な方だったそうです。


「姉妹(ス―ル)」システムというのを第262号:マリア様とロザリオで書きましたが、「片想い」では“エス”になっていました。多分、意味的には同じでしょう。“エスとはシスタアの頭文字が由来で、女子同士が一対一で姉妹のような深い関係を結ぶこと”……こういうのって男子でもあったんですかね? お兄様ではなく義兄弟的な……美少年じゃないとイヤだな(ー_ー;)


昨日は山田詠美さんの『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』を読んだのですが、文中に

「人を賢くするのって、絶対に人生経験の数なんかじゃないと思う。それは、他人ごとをいかに自分ごととして置き換えられるかどうかの能力に掛かっているのではないか、と彼を見るたびに思う。彼の話を聞いていると、映画の数だけ生身の人生がある、と目を見張りたくなる。」

とあり、頷いてしまいました。映画だけでなく小説もそうですよね。



今日もまた本を読んだり、ドラマを見たり、歌を聞いたりしながら、もしかしたら自分だったかもしれない「誰かの人生」に寄り添いたいと思います。皆さまもどうぞよい1日を……ごきげんよう(*^O^*)






rohengram799 at 12:08コメント(4) 

2015年10月31日

暁雲便りNo.14:本を積むひと~10月の本棚

今年の文化功労者のひとりに作家の皆川博子先生が! 85歳なんて思えない作品の若々しくみずみずしい感性、特に乙女心の描き方とかすごいなぁと思います。耽美もホラーも美少年も美少女も歴史物も現代物もなんでもOK!な先生、いつまでもお元気でこれからもステキな作品を世に送り出してほしいです~今日はずっと積ん読だった皆川先生の『少年十字軍』を読むぜぃ( v^-゜)♪



今月の最後の一冊は『アッティラ!』(籾山市太郎)という本でした。アッティラというのは(Attila、406年? - 453年)フン族とその諸侯の王のことらしいです。歌劇とかにもなっているらしい……造語だと思って面白そう!と思って買いました(^^;) 他2編の短編集なのですが、どの作品にも音楽が絡んできます。難しく考えずにシンプルに人と付き合えばいいんだよなぁ、でもそれはなかなか難しいんだよなぁ…と思いました。



この前、ダンナと映画『図書館戦争 THE LAST MISSION』を観てきました。恋愛メインみたいな前評判を聞いていたので、正直それはちょっとなぁ……でしたが、ベタベタ感は少なく、むしろ小学生みたいだ~( 〃▽〃)な微笑ましさ! ラストは「もぅ~岡田くんたら!」でしたわ。戦闘シーンが前作より激しかったんですが「スナイパーの癖に腕が悪い」とか「そこを止血するか~?」とか観賞後、ダンナとツッコミどころを確認しながら感想を言い合いました(笑) 原作は読んでいないのですが、来月は揃えて読もうかな?



『石を積むひと』は映画『愛を積むひと』の原作。映画を観た後すぐに買ったのに読むのが遅くなってしまった……。映画は舞台をアメリカから日本に移して、息子との確執を娘にしたりでしたが、うまくまとめていたな~と思います。北海道美瑛の四季がとても美しくて……人付き合いがうまくないダンナと社交的な奥さん。奥さんを亡くした後の佐藤浩市のやもめがたまらん!でした。原作の親父は高齢でしたので、三國連太郎をイメージして読みました(^^;) ラストは違いましたが、どちらの物語もよかったと思います。私は好きです。



先月に比べて今月はたくさんいろんな本が読めて満足しました。まだあちこち積ん読状態なので、年内にはなんとかスッキリさせたいところです(^。^;)



今月もお付き合いいただき、ありがとうございました。また来月も(4日に更新予定)どうぞよろしくお願いいたします。





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rohengram799 at 22:38コメント(12) 

2015年05月10日

碧雲便りNo.10:きっと、買いにいく(^^;)(;^^)

『きっと、夢にみる』を読み終わりました。なんだろう、漫画で読む怖い話とも普通の怪談話とも違うという感想です。実際自分が体験したら怖くて仕方ないのだろうと思いますが、不思議な体験物語みたいな……これも作家の力量でしょうか、妖艶・耽美という言葉も浮かんできました。


10人の作家さんの中に山梨出身の方がふたり。ひとりは辻村深月さん。幼稚園に通う息子が口にする「だまだまマーク」という言葉に隠された秘密……(~O~;) もうひとりは淺川継太さん。この方は初めて名前を知ったで作品を読むのも初めて……で、検索したら<辻村深月は高校の同級生>……( ; ゜Д゜) ビックリしました~!! 淺川さんのタイトルは『おかいこさんのエレベーター』~ おかいこさんて言うわ~山梨の人だわ~と思いました(笑)舞台が山梨市より田舎のM町…市町村合併で名前が変わっているってあったけど、ウチの実家と同じイニシャルだ……もしや……!? これをきっかけにふたりの作品をまた探して読みたいです。



さてさて、この短編集の最後は皆川博子さんだったのですが、稲生(いのう)平太郎や山本五郎左衛門という名前が出てきました。誰だ?その筋では有名な人?


『稲生物怪録』(いのうもののけろく、いのうぶっかいろく)という、江戸時代中期の寛延2年(西暦1749年)に、備後三次藩(現在の広島県三次市)藩士の稲生武太夫(幼名・平太郎)が体験したという、妖怪にまつわる怪異をとりまとめた物語に出てくる人物名でした。


肝試しにより妖怪の怒りをかった平太郎。屋敷にさまざまな化け物が30日間連続出没することに…(;゜∀゜) しかし、平太郎はこれをことごとく退け、最後には魔王のひとり山本五郎左衛門から勇気を称えられ木槌を与えられる、というもの。平太郎の子孫は現在も広島市に在住、前述の木槌も国前寺に実在。『稲生物怪録』の原本も当家に伝えられているらしい。現在は、三次市教育委員会が預かり、歴史民俗資料館にて管理。稲生武太夫の墓所は広島市中区の本照寺にあるそうです。

http://www.m--m.jp/ami/i_30days.htm



う~ん、怖いというより妖怪や怪談とかってやっぱり文学なんだな、と思いました。既刊の『ずっと、そばにいる』『そっと、抱きよせて』も読んでもいいかしら……なんて気になりました。まずは読みかけの宮部みゆきさんの『堪忍箱』(人間の闇の部分をなんとなく感じる、時代小説短編集です)を今日中に……ですな( ̄▽ ̄;)



皆さま、楽しい日曜日をお過ごし下さいませ(・ω・)ノ



《きっと、夢にみる》執筆者:中島京子/辻村深月/朱野帰子/小中千昭/内藤了/小島水青/皆川博子/淺川継太/沙木とも子/添田小萩



《追記》
宮部みゆきさんの『堪忍箱』読み終わりました~心の闇というより「誰にも言わないであの世まで持っていく」そんな内容が多かった気がします。満足感のある短編集でした!





rohengram799 at 08:35コメント(10) 

2015年03月10日

咲雲便りNo.10:森には心理が落ちている(^^;)(;^^)

昨日はまた雨の1日、そして帰り道はまた風が強くて傘が久々におチョコ状態になり焦りましたわ(;´д`) この前の経験を生かし(?)中古で買った『阿弥陀堂だより』(南木佳士)をポッケに入れていましたがやはり濡れました……なぜカバンにしまわないのか、自分でもよくわかりません(-_-;)



自宅にすぐ帰ればいいのに、本屋に立ち寄り……乾ルカさんの『森に願いを』を探しにいったのに(なんかのレビューを読んでおもしろそうだったので)見つからず、新刊コーナーで目についた『グリムの森へ』を買ってしまいました。←これはちゃんとカバンにしまった(笑)


有名なグリム童話を原書に基づいた話8人の女性作家が再話という……買わずにいられない一冊!! 「ブレーメンの音楽隊」は高村薫さん「カエルの王様、そして忠臣ハインリッヒ」と「兄さんと妹」は松本侑子さん「いばら姫」は阿川佐和子さん「ラプンツェル」と「ヘンゼルとグレーテル」は大庭みな子さん「めっけ鳥」は津島佑子さん「赤ずきんちゃん」と「つぐみひげの王様」は中沢けいさん「星の銀貨」は木崎さと子さん……そして「青髭」が皆川博子さん~(≧▽≦)


まだ読みかけのものが何冊かあって、パラパラしただけですが、当時の挿し絵もたくさんあって物語がまた一段と楽しくなりそうです。また明治時代に日本語に訳された『おほかみ』が収録されています。



「おおかみ=赤ずきんちゃん」だったワタクシでしたが、『おおかみと七匹の子やぎ』でした。そして鳥獣戯画みたいな挿し絵と言ったらオーバーですが、ヤギのお母さん、着物姿です( ; ゜Д゜)ちょっとしなをつくっていて、常磐津のお師匠さんのような立ち姿です。子やぎたちも着物姿ですが、おおかみさんも……子ヤギたちを食べるために寸足らずの着物姿で戸を叩いている絵が……ギャグ漫画かと思ってしまうくらいにスゴいです( ̄▽ ̄;)


文章も「お母さんヤギ」ではありません……物語は「むかし、一匹の年とった女羊(めひつじ)があって、七匹の子供を可愛がって育てていた。」で始まります。おおかみが子やぎたちをのみ込んだことを知った場面の描写はこんな感じです。


《アーそのとき、羊のおっかさんは、子供たちをくはれて、どんなに泣いたらう、どんなにかなしかったらう。このお話を聞くみなさんには、このときの女羊の心を察することが出来ますか。》



おやぢなワタクシは「女ギツネにダンナさんを食われて、奥さんはどんなに泣いたろう」とヘンなお修羅場を想像してしまいました……羊のおっかさん、許して下さいっ!! でも声に出したとしても、へんな抑揚をつけて、綾小路きみまろみたいに読んでしまいそう(* ̄∇ ̄*)


この『おほかみ』は電子書籍で読めるみたいなので、検索してぜひともご覧下さいませ。




本の森に入り込むとに潜んでいた危険で怪しい心理がチラリ……垣間見えてしまうかも(^o^;)………ちなみに今回のタイトルは川原泉さんの漫画『森には心理が落ちている』からいただきました(´∇`) どうぞ皆さま、夢がモリモリの楽しい1日にして下さいねっ♪






rohengram799 at 10:25コメント(9) 

2014年07月10日

美雲便りNo.12:富貴寄せ

今日もむし暑く風が強いです。台風の進路が気になりますが……お見舞い申し上げます。泥の臭いが酷く、雨が止んだあとも大変だと思います。どうぞお気をつけて下さい。



今日は皆川博子さんの『薔薇忌』を読んでいます。いくつかの出版社から出ていますが、私はカバーの美しい実業之日本社文庫のを買いました。新たに書き下ろした「あとがき」はどんな感じかしら?

表題作は降りしきる薔薇のはなびらで窒息することを夢見て、縊死した劇団員を描いた話。文学忌には桜桃忌とか菜の花忌とかありますが「薔薇忌」はあるのかしら?と調べたらありました! 小説家・評論家の塩月赳(しおつきたけし)の1948(昭和23)年の忌日。太宰治の『佳日』のモデルで(同級生だったらしい)塩月の死の3ヶ月後に太宰が入水自殺したそうです。評論集『薔薇の世紀』から薔薇忌と呼ばれるように。


『佳日』はその題名が示すように結婚式にまつわるエピソードをを描いた小説で、昭和19年に刊行され、青柳信雄監督で入江たか子、山田五十鈴、高峰秀子、山根寿子、志村喬らの出演で『四つの結婚』と改題して上映されたそうです。ちあきなおみの『四つのお願い』が脳内を駆けめぐってしまいました( ̄▽ ̄;)


バラという響きから、土方さんが少年の頃、キレイなお顔に似合わず「バラガキ」(触ると痛いイバラのような乱暴な少年)と呼ばれていたことを連想してしまいます~「バラガキのトシ」が「鬼の副長」と呼ばれるようになる経緯は夏休み読書にオススメ!!の『燃えよ剣』でお楽しみいただきたいです(^.^)


さてさて、少し前ですが新聞に《背守り》という言葉がありました。幼子の着物の背の部分(後ろ襟から背中心)に施された飾り縫いのこと。大人の着物と違い、身幅の狭い子供の着物には背に縫い目がありません。医療が未発達で生活環境も厳しく、子供が命を落とす確率は今よりずっと高い時代ですから「背後から魔が忍び込む」と恐れることをバカバカしいなどとは思いません。どうか、健やかに成長してほしい……そんな母親たちの祈りを込めた願掛けだったのですね。


中世には既に行われていたという研究もあり、日常的に着物を着ていた昭和初期まで(呼び名は違いますが)日本各地で広くみられた風俗だそうです。最も一般的なのは、背の中央を縦に縫い目を施した「糸じるし」。なんだ、それだけ?と思うかもしれませんが、縫い目にも一定の約束事があり、ずいぶん長いものも。これは「糸が長ければ長いほど、長寿になる」と……糸も貴重な時代だったでしょうに(ノ_・,)


「赤ちゃんが産まれた時に最初に着せるものには麻の葉模様のがいい、麻は成長が早いからスクスク育つ」という話を聞いたことがありますが、花嫁さんの純白の内掛けには「貴方色に染めて(〃▽〃)」より「子宝に恵まれたら、 産着に作り替えて赤ちゃんに着せてあげてね。白い正絹は虫が付きにくい。すくすくと丈夫に育つ麻の葉にあやかった模様を施してあげて」という願いが込められていたそうです。


また長寿の人、徳のある年寄りの人、健康な人、親切な親戚の家々などからハギレをもらい受け、沢山の徳が授かりますように、幸せに暮らせますようにと小さい子への幸福を布に託した《百徳着物》も。この布には人知の及ばない力が宿ると信じて、子を思う気持ちを一つの着物に「寄せあわせ」ました。布を所望された人たちも頼りにされたことが嬉しく、新米ママさんをほほえましく見つめて子育ての連帯が生まれる……自分にゆかりのあるものが、いのちをを言祝ぎ、子どもの未来を輝かせることを想像して楽しく思える、関わった子のその後が気になるので、知り合った母親にも折々に声をかけるきっかけにもなる……損得勘定なしに、やさしい気持ちがみちあふれていますね。


使い道がないかも…と考えていた切れ端の寄せ集めを「富貴寄せ」と言いかえ、あでやかな着物に仕立て直して「凶事を吉にかえる」という、昔の人たちはいまよりずっと言霊を身近に大切にしていたことがわかります。そして、たくさんの人の想いを込めたものとして「千人針」を思い出したワタクシなのでした。


《千人針》

http://www.city.hanno.saitama.jp/0000003220.html



追記:夕方6時頃に茨城を震源とした地震がありましたが、皆さま、大丈夫でしたか? 大雨で地盤の緩んでいるところもあるでしょう。どうぞお気をつけ下さいまし!!





rohengram799 at 12:46コメント(6) 
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