辻内智貴

2011年07月24日

第541号:信さん

『信さん』といっても金丸信でも『め組』に居候する貧乏旗本の三男坊・徳田新之助でもありませんぞ!!←暴れん坊将軍は字が違うし(笑)


『青空のルーレット』が気に入ったワタクシ、同じ作者の『信さん』を読みましたの!


ヤバいわ…また泣くところだったわ…すっかり昭和に涙するおばちゃんになってしまった(((^^;)


舞台は作者の故郷の福岡。その炭坑町で信サンは評判のワルガキ!けれど、本当は絵が上手で優しいのだ。内気だった主人公をいじめから助けてくれた二才年上の友達。


信さんは子どものいない叔父さん夫婦にひきとられたんだけれど、よくある話で妹が生まれた…血のつながりがない養母はもちろん自分の子どもがかわいいから信サンに辛くあたるし、叔父さんも乱暴するし…。


妹(本当はいとこ)を大学に進学させるため働いて働いて…東京でひとりで亡くなった信サン。主人公のお母さんへの憧れが一枚の絵に凝縮されたラストシーンにグスン(T-T)


実は私の祖父も養子にいったけれど、その後子どもがうまれたらしいのです。実母が商売をはじめてから一度訪ねてきたらしいのですが、逢わなかったと聞いています。もう古い話で詳細はわからないのですが。


また、主人公の母親が干し柿が好きだと知った信サンがよそのお宅からちょっと失礼!な場面がありました。


気づいていたはずのお母さんは何もいわずにうけとります。その柿が残り一個になり(40個もあったのだ!!)「まだ食べたい?他に何かある?」と信サンがきいた時にお母さんは「何も。あとは信サンが、どんどん良か子供になってくれたら、おばさんは嬉しいよ」微笑みながら、頭をなでたのです。


信サンんはその言葉に込められた愛情がわかったはず。そしてお母さんは柿をとられたお家にすぐに謝りにいっていたのです。


ウチの母も干し柿が大好き!!なので、もし母が同じ立場だったらどうしたかなぁ、「ダメじゃん!!」とすごく怒るのかかなぁ…なんてまた考えてしまいました。


もう一作は『遠い町』、ヨンくんという自分(前の作品の主人公とは別人と思う)と違う国の友達の話。


強制連行され、炭坑で働かされた韓国の人たち…ボタ山ときくと『三たびの海峡』(帚木蓬生、映画にもなりました)を、子どもたちの関係は朱川湊人さんの『赤まんま』という短編集の中の『トカビの夜』(これも泣かずにはいられませんでした)を思い出しました。


私の小さい頃は、欧米人も東洋人もまわりにはいなかったと思うので、ひどい差別やいじめを見聞きしたことはありません。でも、子どもってなんであんなに残酷なことや、泣きたくなるくらい優しいこともできるのかと考えてしまいます。


『信さん』は140ページくらいの薄い文庫本なのに、私をいろんな時代に連れていってくれて、昔読んだ本も思い出させてくれた、凄腕の一冊(笑)ちょっと童話っぽい雰囲気もあるので、小学校高学年のコとか夏休みに読んでもいいかも。まぁ、時代背景はピンとこないでしょうが。


《青空フェチ》と解説に書かれていた辻内さん♪「親父、鳥になれるといいな。」の帯にひかれ『野の風』という作品も買ってしまいましたぁ!!←ポイント10倍の魔力ね(-.-)



rohengram799 at 01:51|この記事のURLComments(8)

2011年07月21日

第538号:星空派と青空派

皆さま、台風の被害などありませんでしたか?昨日から妙に涼しく「秋!?」みたいですわ(-_-;)


今日からまた仕事ですが、窓拭きの仕事をしている青年が主人公の『青空のルーレット』という本を読みました。窓拭きは生活のため、本当は大きな自分だけの夢を持っている野郎たち(笑)の物語です。典型的なイヤミな経営者にムカつきまくり!!
でもラストはカッコいいので、ドラマでみたいかも(*^^*)


作者の辻内智貴さんは音楽活動もしていたようで、同時収録の『多輝子ちゃん』は歌がキーポイントなので、やはり音楽をしていた人なんだと思いました。


文中に「歌は何か人の役にたたなくちゃいけないよ」「歌なんて、飲めも喰えもしないんだから、何か小さくても、人の心の足しになるような歌を、おれたちはつくらなきゃいけないんだ」という言葉があり、辻内さんもそう思ってやってたんだろうなぁ、実際に音楽をつくっていた人の言葉だと思い、お鼻がツーンとなりました。


ブログタイトルは、作者のあとがきからいただきました(笑)青空派と星空派にわかれる…ウソです、なんて書いていましたが案外当てはまるのかな?彼は青空派!!


…青空というのは、あれは、けして、空の表皮などでは無いのである。ペラリと剥ける様な、そんな、それだけのものでは無いのである。青空というのは、あれは、背中に永劫の宇宙(やみ)をズシリとかかえて、それでもニコリと笑ってみせている、痛々しい笑顔のようなものである。リウマチに痛む足をこらえながら、それでもニコニコと幼い孫に手を引かれてみせる、老婆の深々とした笑顔である…


青空を見上げる機会があったら、この言葉を思い出して下さい。皆さまは、どんなことを思うのかしらん…先週、仕事の休憩時間に読んでいた私はまたハンカチで目頭を押さえてしまいましたよ(T-T)


rohengram799 at 11:58|この記事のURLComments(19)
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