遥かなる山の呼び声

2012年05月09日

あかね雲便りNo.8:蘖(ひこばえ)

『蘖や涙に古き涙はなし』(中村草田男)


蘖(ひこばえ)とは、樹木の切り株や根元から生えてくる若芽のことで、太い幹に対して、孫(ひこ)に見立てて「ひこばえ(孫生え)」というそうです。


ワタクシ、いつもの思い込みで「ひこばえ」は「やまびこ」の仲間だと思っていました…多分『遥かなる山の呼び声』というタイトルの影響だと思われます…調べて良かった(((^_^;)


草田男は“蘖のように涙は次々と新しくあふれるものだ”と詠んだのでしょうか。そしてこの涙は辛く悲しくせつない涙のように感じます。春先から夏に見られますが、季語としては春になるそうで…花吹雪の中の別れの情景と大好きな李白の『黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之(ゆ)くを送る』が浮かんできます。皆さまも中学の教科書に載っていませんでしたか?


五層の高楼・黄鶴楼。昔酒場の壁に仙人が描いた黄色い鶴が歌に合わせて踊り出すということで評判になり店が繁盛したという。そして再び仙人が現れ壁の鶴の背に乗って去って行ったと云う伝説があるそうですよ。


故人西辞黄鶴楼
煙花三月下揚州
孤帆遠影碧空尽
唯見長江天際流


故人 西のかた黄鶴楼を辞し 
煙花三月 揚州に下る
孤帆の遠影 碧空に尽き 
唯(ただ)見る 長江の天際(てんさい)に流るるを


我が友、孟浩然は黄鶴楼に別れを告げ、これを西にして春霞に花が咲き乱れる春三月に揚州へと下ってゆく。 ポツンとひとつ遠くに浮かんだ帆影はしだいに碧空へ吸い込まれるように消え失せ、あとはただ長江がはるかな空の果てまでも流れていくばかりである。


悲しいとか寂しいとか直接言葉にしない分、大切な友人と別れた後の李白の気持ちが伝わってきて、いつ読んでも胸キュン!!お鼻がツーン!!であります。


そうだ!肝心なことを書いていませんでした。私が「蘖とは何ぞや?」と思ったのは新聞に載っていた川柳からです。


『老木が教える人の咲かせ方』(流山市 大竹芒洋)


この句は秀逸に選ばれていました。選者の瀬々倉卓治さんの寸評です。


「倒れた樹は、ひとの姿になっている。起きあがる樹は蒼天をさしている。枯れた樹は土の中で蘖を抱いている。老木の枝に梅がいち輪。私に、いつも不滅を暗示する。齢(とし)をとると樹の言葉がわかる。」


>枯れた樹は土の中で蘖を抱いている。


この言葉に導かれ、また新しい知識の若芽を出すことができそうです。今日も荒れた天気になりそうですが、気持ちはいつも五月晴れ、天晴れでまいりましょう\(^o^)/




rohengram799 at 12:26コメント(8) 
メッセージ

名前
メール
本文
記事検索
月別アーカイブ