随想

2015年08月21日

海雲便りNo.14:あの日『あのひと』と……

ようやく新潮文庫編集部編の傑作随想41編『あのひと』を読み終わりました。読んだり休んだりを繰り返していたので、本もだいぶくたびれてしまいましたが(;^_^A



吉原幸子さんが亡くなられたお母様のことを書いたという『あのひと』という詩を「あのひと考」という最後の随想で谷川俊太郎さんが紹介していました。8月は私が「いのち」について、家族について一番考える特別な月のひとつです。あのひと……という言葉のもつ不思議なあたたかさ、懐かしさを皆さまと共有できたらと思います。皆さまの心に浮かぶ『あのひと』はどんな方でしょうか?




 あのひとは 生きてゐました
 あのひとは そこにゐました
 ついきのうふ ついきのふまで
 そこにゐて 笑ってゐました

 あのひとは 生きてゐました
 さばのみそ煮 かぼちゃの煮つけ
 おいしいね おいしいねと言って
 そこにゐて 食べてゐました

 あたしのゑくぼを 見るたび
 かはいいね かはいいねと言って
 あったかいてのひら さしだし
 ぎゅっとにぎって ゐました

 あのひとの 見た夕焼け
 あのひとの きいた海鳴り
 あのひとの 恋の思い出
 あのひとは 生きてゐました
 あのひとは 生きてゐました   




少しばかり体調が悪いので、次回更新は月曜日になります。お返事も遅れます。ごめんなさい<(_ _*)>



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rohengram799 at 18:49コメント(16) 

2015年01月24日

福雲便りNo.22:スミにおけない『あのひと』

『人といふかたちに炭をつぎにけり』(島雅子)


茶道に「炭手前」というのがあるそうですね。炭手前は、湯を沸かす順序を一つの形式としたもので、炉中に五徳を据え、灰を入れるのですが、火のおこりを良くするために、火箸で灰を隅から掻き上げて山をそれぞれ向こう、手前、左・右とつくるのだそうです。手順よく、無駄もなく、火が早くおこり、火気が充分釜にあたるように工夫されているらしい……茶道など全くわからないワタクシですが、こうしなさい!という厳しく洗練された手順の根底には、大切におもてなしをしたい「ひと」がいるのだということをこの句を読んで感じました。炭火のあたたかさは日本人のじんわりくるおもいやりに通じる気がします。派手さはないけれど、いつまでもぬくもりが残る感じ………茶道用の炭もあるそうで……こちらをご覧下さい。


http://www.masudaya.co.jp/tea/tanjo.html



さてさて……『あのひと―傑作随想41編―』を先月からちまちまと読んでいます。内容はコチラを。


http://www.shinchosha.co.jp/book/127445/


「あのひと」という言葉、どんな場面でどんな口調でいうかで印象がかわりますね。最初にうかんだのはキャンディーズの♪あの人は~悪魔~私を虜にする~の『やさしい悪魔』でしたが(作曲が吉田拓郎!)これじゃない感じがあって……やっぱり『特捜最前線』(ドラマ)のエンディングテーマ、♪あの人はあの人は~私だけの十字架……ナゼか二番の歌詞が使用されていたという『私だけの十字架』が一番しっくりきました。


http://www.hbs.ne.jp/home/fou/omake/hen_34.html



皆さまの思い浮かべた「あのひと」はどんな縁(ゆかり)の方でしょう……ひだまりのような方かしら? それとも北風小僧のような……(゜゜;)\(--;)


大切な「あのひと」を想う冬の1日もいいですね。最後は谷川俊太郎さんの巻頭詩『あのひと』で……(´ー`)ノ




「あのひと」と呼ぶとき
その人は広くもない私の心の部屋で
背中を見せて寛いでいる
寂しげな気配はない
名を呼べば振り向くだろうが
知り過ぎているその人を
いま私は「あのひと」と呼んでしまう


私を抱きしめて時に突き放す人
あのひとにどう近づけばいいのか
いまだに私は分からない


でもあのひとは他の誰とも違う人
決して人ごみに紛れてしまわない人
墓石の名が風雨にすり減った後に
私の心の部屋に帰ってくる人


あのひとと呼ぶときその人は
私だけの時のせせらぎのほとりに
いつまでも立ちつくしている






rohengram799 at 10:25コメント(8) 
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