2011年06月26日

第524号:流れ星が消えないうちに

『人間ってさ、川嶋が言うように、誰かに頼らないと生きられないんだよな。俺もちゃんとわかってるんだ、そういうの。だけど、ひとりで生きられるようにならなきゃいけないとも思っている。でないと、結局、ただもたれ合うだけになっちまうだろう。それじゃ駄目なんだ。ちゃんとひとりで立てる人間同士が、それをわかった上でもたれ合うからこそ、意味が生まれるんだ。』


高校生の時、こう言っていた加地くんは大学に進学せず、海外のあちこちに出掛けます。そして旅先で事故に遇います。友達の川嶋(巧)くんと恋人の奈緒子ちゃんの前から、この世界から突然姿を消してしまいました。


巧くんと奈緒子ちゃんはその後お付き合いをするようになり…という小説の題名が今回のタイトルです。ありふれた恋愛小説みたいに思うかもしれませんが、そこは違うんだなぁ( ̄ー ̄)


愛する人を何の前触れもなく失った人間が、また生きていこうと思うまでの物語。おおげさではなく、多分こんなふうに時間は悲しみや喪失感を癒してくれるのだと思いました。


立っている場所が変わると、同じ風景でも違うように見える……これは、加地くんの言葉でした。『覚えていた巧君が、お父さんに言った。そして今度は、お父さんがわたしに言っている。言葉や思いは、こうして巡っていくのだ。もうこの世にいないのに、加地君の思いは確かにお父さんにまで伝わっている。』


残された人間が生きていく意味はそこにあるのかも、と思うのです。残してくれたものを受け取り、また新しい人に受け継いでもらい、その人がまた次の人に…。


タイトルに「流れ星」があるのは3人を結びつけた学園祭のプラネタリウムによります。この場面もいいですよ~高校時代のあの中途半端な気分に戻って自分もそこで一緒に流れ星を見ている気持ちになってきます。そういえば、前の日に読んだ佐藤多佳子さんの『黄色い目の魚』も学生さんの話でした(((^_^;)


解説は重松清さん。この作品にぴったり!!最後は重松さんの文章に泣きました。おばあちゃんとずっと救助を待っていた少年の「星がきれいでした」という言葉を思い出します。今だからこそ、全く知らない作家さんのこの本が私を呼んでくれたのだと、信じたいです。私の手元に来てくれてありがとう…抱きしめたい一冊、皆さまにもおすすめです!!


『空を見上げるのは、祈りだ。傷つき、苦しんできたひとたち―永遠を生きることがかなわないからこそ愛おしい生を生きるひとたちが捧げる、歩き出すための祈りだ。ひとは繰り返し空を見上げ、繰り返し祈りつづける。
それに応えるかのように、夜空は流れ星を僕たちに見せてくれる。
どきどき、流れ星は一冊の書物に姿を変える。
僕は、橋本さんの小説を、そんなふうに読んでいる。』




rohengram799 at 08:52コメント(14) | 空のお城図書館  

コメント一欄

1. Posted by ラブソン   2011年06月26日 11:15
5 オスカーさん、こんにちはo(^▽^)o!
ビートたけしさんの曲のなかで「嘲笑」と云う星に纏わる名曲がありますよ(^^)。オススメの曲です(^^)。
2. Posted by kazu   2011年06月26日 14:10
こんにちは!

いい言葉ですね・・・。
1人で立ててこそ支えあえる関係。

改めて感じました。
3. Posted by オスカー   2011年06月26日 15:22
§ラブソン様
タケちゃん作詞で玉置さん作曲なんですね。大好きな2人の組み合わせ(プライベートは問題ありすぎですが)教えてくれてありがとう

§kazuさま
この言葉を読んだ時に福永武彦さんの『愛の試み』を思い出しました。お互いの孤独を確認する作業が愛…みたいなことが書いてあった気が…する(笑)だって25年以上前だもん
4. Posted by たいちゃ~ん   2011年06月26日 15:33
4 こんにちは!(^^)!

>立っている場所が変わると、同じ風景でも違うように見える
必死だった社会人生活から~~年金生活に入って、
社会を、全く違う感覚で物事が見えるようになりました~~~

そして、今WEBの勉強、失業者の集まりです・・・・・!
考え方がアマイ感じ、ひとりで立って支え合うには至ってない
雰囲気です。\(゜ロ\)(/ロ゜)/
5. Posted by 松尾陽   2011年06月26日 20:17
自立できてる者同士の友情は長続きしますね。
片方でも依存心があると、些細なことでキレて終わります。

流れ星や景色など様々なものの中に何が見えるか、本人のみぞ知るですね。
6. Posted by まろゆーろ   2011年06月26日 20:21
人生って自分次第でいくらでも変わると思うのは傲慢かもしれないですね。
「立っている場所が変わると・・・」の言葉、身に沁みますね。
人は生かされているんだと最近はつくづく思うようになりました。
異なった境遇や、異なった出会い。
一瞬一瞬をおろそかにしないことでしょうね。

今夜も素敵な言葉をありがとうございます!!
7. Posted by オスカー   2011年06月26日 22:41
§たいちゃ~ん様
年齢を重ねて柔軟になる人と頑なになる人といますよね。たいちゃ~ん様は風知草のようにしなやかにいろんなものを発見してサヤサヤと教えて下さいね。

§松尾陽さま
高校時代は子どもっぽい人もいますが、妙に悟ったような大人っぽい人がいましたね。私はマンガ好きなヘンな女学生でした

§まろゆーろ様
この本は表紙とタイトルが気に入って、中古本「50円」で買いました~新潮文庫です(笑)。何百倍もの価値がありました!!1日一冊まだ知らない作家さんの世界にふれる…これを下半期の目標にしました
8. Posted by やま   2011年06月26日 23:57
こんばんは(^^)

記事を読んでいると自分もこの本を読んでみたいなぁ…と思いました。

自分も読みながらいろんなことを思いだしそう。


9. Posted by てんし   2011年06月27日 01:38
おはようございます

自分の肉親を亡くしてしまう辛さは、言葉では言い表せないものがありますが、血は繋がっていなくても、『無二の親友』や『許嫁』の関係の人を失ってしまった悲しみというか焦燥感は、また別の意味で言葉では言い表せないものがあります。

私は大学時代『無二の親友』を事故で失いました。その時の驚きというか、焦燥感というか、絶望感と言ったらいいのか解りませんが、1週間くらいご飯も喉を通らないくらい落ち込みました。
親友が亡くなる前の日も、私のアパートに遊びに来ていて、そのまま泊まって行きました。

そしたら次の朝早く電話で、親友の死を知りました。大学3年の時だから、まだ人生の苦しさをあまり知らない時だから、なおさら心に堪えました。

オスカーさんの紹介していただいた小説は、私にも心に染み渡るものを与えてくれるのではないかと思いました。
10. Posted by なう60   2011年06月27日 08:42
おはようございます。
「愛する人を何の前触れもなく失った人間が、また生きていこうと思うまでの物語。」人生は、無常、東日本大震災の現実、沢山の人が前触れもなく愛する人をなくしました。また生きて行こうと思うまで「絶対、生き抜いて」下さい
11. Posted by kouchan   2011年06月27日 11:49
やっとPCでネットが自由にできるようになりました。
東北への災害支援研修と新潟への工場実習でブランクのある日もありますが、時間さえあれば、また遊びに来ますね。
准教授「ちょちょちょ、誰、僕のパソコンハッキングしてるの!?」
12. Posted by オスカー   2011年06月27日 14:25
§やま様
学園祭とかフォークダンスとか、友達に頼んで好きな子を呼んできてもらうとか~懐かしい場面がたくさんありますよ♪

§てんし様
親友と呼べる相手に巡り逢えたって素晴らしいことだと思います。いつもてんし様の羽根が痛まないようにお手入れして下さっていると思います。

§なう60様
人間には未知の可能性、力がたくさんあると思います。すべてを生きる栄養にしてたくましく進んでいきたいです。重松さんの解説だけでも皆さまに読んで欲しいです。

§ kouchanさま
今の時期だからこそ意義ある東北の研修ですね。少し観光もできるといいですね~みんなとわんこそば対決!!(笑)
13. Posted by    2011年06月28日 00:56
5 冒頭の文。
今まさにそういう気持ちです。

本当に高校生でここまで考えられる人が居たらすごい…です!

ちょうど今重松さんの本を読んでます。
これが終わったらこちらも読んでみたいですね。
14. Posted by オスカー   2011年06月28日 11:48
§熊さま
なんとなくそんなことを考えていても、きちんと言葉に出来ない世代ですよね。話す相手もいないのが正しいのかも重松さんの本、いいですよね!!

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