2012年02月28日
第706号:パン屋の翼(^^)
ネタがまとまらないのもありますが、今回この話をブログに残しておこうと思ったきっかけは『真夜中のパン屋さん』でした。登場人物のひとり、暮林さんと奥さんの出逢いを回想するシーンがあり、そこでおモーさまの『トーマの心臓』を思い出したのです。
「ぼくの翼じゃだめ?」……うう、私はユーリが大好きだからエーリク、君の気持ちがせつなすぎて泣いたよ…今でもあの場面を思うと涙がでる(ToT)
そこからアタマは羽根枕状態に(笑)おヒマでしたら、いましばらくお付き合い下さいませm(__)m
「ぼくの翼じゃだめ?」……うう、私はユーリが大好きだからエーリク、君の気持ちがせつなすぎて泣いたよ…今でもあの場面を思うと涙がでる(ToT)
そこからアタマは羽根枕状態に(笑)おヒマでしたら、いましばらくお付き合い下さいませm(__)m
『翼あるもの』第3回
実りのない不毛な仕事を終え事務所に戻ったブルースは大きなため息とともにソファーに倒れこんだ。
(あなたにはお父さまもお母さまもいてうらやましいわ。私のお母さまはね、もういないの…。JAPONって知ってる? ここの裏側にある国なんですって! そこがお母さまの生まれた国なのよ)
(ずいぶん遠くからいらしたんですね)
(私ね、お父さまにお母さまの形見はないのってきいたの。そしたら“お前の瞳はお母さまと同じ色だし、名前だってお嫁にきた時からもう決めていたんだよ”って…お腹にいる時もいつも愛を込めて呼んでいたよって。生まれてからもそうだったって言われたけど、私は覚えていないの)
(そうですか。でもきっと旦那さまも同じお気持ちでしょう)
(私、大好きな人にもお母さまと同じようにして欲しいって思っているんだけれど……ねぇ、どうしてあなたは私を“お嬢さま”って呼ぶの?)
オレは使用人の息子だから―親父はひとがいい、それだけが取り柄の男だった。そのために何度騙された? おふくろとオレはいつも辛く情けない思いをした。“自分が他人を騙していないならいい”と言っていたが、旦那さまを陥れることになってしまうとは…!!あの親父には考えつかない。親切そうに近づいてきたアイツに騙されたんだ。気がついた時にはもう遅かった…八方塞がりだった。親父は死に、おふくろはショックで倒れた。鉄格子の部屋に入れられ、完治する見込みがないと言われた時に、オレはおふくろと街を出ようと決めた。
「なぁ、この前の…なぜ隠した? 昔の女か?」
先に事務所に帰っていたレンハートがコーヒーを渡しながら声をかけてきた。ブルースは上半身を起こし声を出して笑った後、意識して冷やかすような表情をつくり返事をした。
「なんだ、気にいったのか? お前ならほっといても女の方からよってくるだろうに。ヒュームと取り合うつもりか?」
「お前を、だったらそうするかな」
相手も感情を押し殺した顔と声で応えた。
「笑えない冗談だな。どっちも辞退させてもらおう」
一度両手をあげ首を横に振ってから、右手でピストルの形を真似て相棒に向けて言った。
「少し眠るけど襲うなよ」
ブルースは腕を枕に目を閉じる。ヒュームには憎悪以外の感情はない。父を破滅させた男に組み敷かれるなどと誰が考える!? 今はおふくろが人質だ。空気の良いところへ転地療養させたとふざけたことをぬかしやがって!! オレがアイツにさわるのはヤツの首を絞める時だろうよ。
(レンハートは…?)
彼の言葉は忘れていた出来事を心よりも先に身体に思い出させたが、あれを愛と名付けるようなガキじゃない。同情に近いものだ。生きるためには何でもやるし、実際やってきた。けじめはつけていたつもりだか、あの屋敷での暮らしはやはり風を防ぐのに十分すぎるほど温かかったのだ。親父もその恩を知っていたから、ああするしかなかった。
(あなたのお父さまは誰に対してもやさしくて本当にいい人だった。“テオだけが悪いんじゃない”って父も言っていたわ。私もうらんでいない。どうしてここに残ってくれないの? なぜ行ってしまうの?)
別れたのはオレが16、いやこれは彼女の歳だ。オレは20歳になる直前だった。旦那さまも亡くなったと聞いた。その後、生きていくために彼女が何を捨て何を得たかは容易に想像できる。だか、それを責める権利などオレにはない。反対にそれを受ける義務がある人間なんだ。
(あの時、彼女をさらって逃げていたら……?)
寝返りをうちながらブルースは胸の傷が疼くのを感じた。
ヒュームはひとりで『レイナ』に足を運んだ。閉店間際で客はいない。
「昨日の夜は部下がこちらで酒をご馳走になってね
。オレも女の子たちには楽しませてもらったからお礼を言いに来たんだよ。褐色の肌と白い肌と…最高のキャンパスにそれはそれは素晴らしい絵が描けた」
毒を含んだその言葉と一段と冷たい視線に身体が震えた。顔は青ざめ、数秒後ようやく声が出た。
「まさか…」
「今日はいないのかい?
あのかわいい声で鳴く小鳥ちゃん達は。さてと…君たちはどんな声でオレを楽しませてくれるのかな?」
女の子たちは慌て外に出ていった。その様子をながめ、ひとしきり笑ったあとヒュームは言った。
「もうこの店では誰も働かないな。ああ、退職金もウチから払うからご心配なく。昨日の小鳥ちゃん達にも治療費込みで渡しておいたから。今頃は彼氏とブエノスアイレスあたりでタンゴを踊っているかもしれないなぁ、ベッドの上で、ね。お前も」
レイナな手首をつかみ、テーブルの上に押し倒す。残酷さに奇妙な悦楽の混じった顔が近づき、細い首筋に生温かい息がかかる。
「ほぉ…これはこれは!誰かと同じで…」
その時、勢いよく扉が開きヒュームはすぐさま壁に叩きつけられた。部下の中で一番若い日系人のアキラが自分を見下ろしているのに気がつき立ち上がった。
「ボス、こんなところで遊んでないで下さいよ。連絡、きました」
ヒュームを壁に叩きつけたのはレンハートだったが、彼はなにくわぬ顔をして表に立ち“車に”と促した。大事な商談だ。ここでムダな時間を費やすわけにはいかない。
「レンハート、ブルースにも伝えておいてくれ。13時にここだ。いいな」
走り書きのメモを渡すと、ヒュームはアキラの運転する車で別件の打ち合わせに行った。
まだまだ続く(~o~)
実りのない不毛な仕事を終え事務所に戻ったブルースは大きなため息とともにソファーに倒れこんだ。
(あなたにはお父さまもお母さまもいてうらやましいわ。私のお母さまはね、もういないの…。JAPONって知ってる? ここの裏側にある国なんですって! そこがお母さまの生まれた国なのよ)
(ずいぶん遠くからいらしたんですね)
(私ね、お父さまにお母さまの形見はないのってきいたの。そしたら“お前の瞳はお母さまと同じ色だし、名前だってお嫁にきた時からもう決めていたんだよ”って…お腹にいる時もいつも愛を込めて呼んでいたよって。生まれてからもそうだったって言われたけど、私は覚えていないの)
(そうですか。でもきっと旦那さまも同じお気持ちでしょう)
(私、大好きな人にもお母さまと同じようにして欲しいって思っているんだけれど……ねぇ、どうしてあなたは私を“お嬢さま”って呼ぶの?)
オレは使用人の息子だから―親父はひとがいい、それだけが取り柄の男だった。そのために何度騙された? おふくろとオレはいつも辛く情けない思いをした。“自分が他人を騙していないならいい”と言っていたが、旦那さまを陥れることになってしまうとは…!!あの親父には考えつかない。親切そうに近づいてきたアイツに騙されたんだ。気がついた時にはもう遅かった…八方塞がりだった。親父は死に、おふくろはショックで倒れた。鉄格子の部屋に入れられ、完治する見込みがないと言われた時に、オレはおふくろと街を出ようと決めた。
「なぁ、この前の…なぜ隠した? 昔の女か?」
先に事務所に帰っていたレンハートがコーヒーを渡しながら声をかけてきた。ブルースは上半身を起こし声を出して笑った後、意識して冷やかすような表情をつくり返事をした。
「なんだ、気にいったのか? お前ならほっといても女の方からよってくるだろうに。ヒュームと取り合うつもりか?」
「お前を、だったらそうするかな」
相手も感情を押し殺した顔と声で応えた。
「笑えない冗談だな。どっちも辞退させてもらおう」
一度両手をあげ首を横に振ってから、右手でピストルの形を真似て相棒に向けて言った。
「少し眠るけど襲うなよ」
ブルースは腕を枕に目を閉じる。ヒュームには憎悪以外の感情はない。父を破滅させた男に組み敷かれるなどと誰が考える!? 今はおふくろが人質だ。空気の良いところへ転地療養させたとふざけたことをぬかしやがって!! オレがアイツにさわるのはヤツの首を絞める時だろうよ。
(レンハートは…?)
彼の言葉は忘れていた出来事を心よりも先に身体に思い出させたが、あれを愛と名付けるようなガキじゃない。同情に近いものだ。生きるためには何でもやるし、実際やってきた。けじめはつけていたつもりだか、あの屋敷での暮らしはやはり風を防ぐのに十分すぎるほど温かかったのだ。親父もその恩を知っていたから、ああするしかなかった。
(あなたのお父さまは誰に対してもやさしくて本当にいい人だった。“テオだけが悪いんじゃない”って父も言っていたわ。私もうらんでいない。どうしてここに残ってくれないの? なぜ行ってしまうの?)
別れたのはオレが16、いやこれは彼女の歳だ。オレは20歳になる直前だった。旦那さまも亡くなったと聞いた。その後、生きていくために彼女が何を捨て何を得たかは容易に想像できる。だか、それを責める権利などオレにはない。反対にそれを受ける義務がある人間なんだ。
(あの時、彼女をさらって逃げていたら……?)
寝返りをうちながらブルースは胸の傷が疼くのを感じた。
ヒュームはひとりで『レイナ』に足を運んだ。閉店間際で客はいない。
「昨日の夜は部下がこちらで酒をご馳走になってね
。オレも女の子たちには楽しませてもらったからお礼を言いに来たんだよ。褐色の肌と白い肌と…最高のキャンパスにそれはそれは素晴らしい絵が描けた」
毒を含んだその言葉と一段と冷たい視線に身体が震えた。顔は青ざめ、数秒後ようやく声が出た。
「まさか…」
「今日はいないのかい?
あのかわいい声で鳴く小鳥ちゃん達は。さてと…君たちはどんな声でオレを楽しませてくれるのかな?」
女の子たちは慌て外に出ていった。その様子をながめ、ひとしきり笑ったあとヒュームは言った。
「もうこの店では誰も働かないな。ああ、退職金もウチから払うからご心配なく。昨日の小鳥ちゃん達にも治療費込みで渡しておいたから。今頃は彼氏とブエノスアイレスあたりでタンゴを踊っているかもしれないなぁ、ベッドの上で、ね。お前も」
レイナな手首をつかみ、テーブルの上に押し倒す。残酷さに奇妙な悦楽の混じった顔が近づき、細い首筋に生温かい息がかかる。
「ほぉ…これはこれは!誰かと同じで…」
その時、勢いよく扉が開きヒュームはすぐさま壁に叩きつけられた。部下の中で一番若い日系人のアキラが自分を見下ろしているのに気がつき立ち上がった。
「ボス、こんなところで遊んでないで下さいよ。連絡、きました」
ヒュームを壁に叩きつけたのはレンハートだったが、彼はなにくわぬ顔をして表に立ち“車に”と促した。大事な商談だ。ここでムダな時間を費やすわけにはいかない。
「レンハート、ブルースにも伝えておいてくれ。13時にここだ。いいな」
走り書きのメモを渡すと、ヒュームはアキラの運転する車で別件の打ち合わせに行った。
まだまだ続く(~o~)
コメント一欄
1. Posted by kouchan 2012年02月28日 19:12
准教授「僕はね、麒麟の翼読んで感動したんだよ♪♪ヽ(´▽`)/」
学生「先生も麒麟みたいに架空の生き物だったら良いのになぁ。。。」
准教授「(ノ_・,)(ノ_・,)(ノ_・,)」
毎日書いてる准教授と学生、ときどきポッキー教授の漫才纏めたら本になりそうです(*´∇`*)
学生「先生も麒麟みたいに架空の生き物だったら良いのになぁ。。。」
准教授「(ノ_・,)(ノ_・,)(ノ_・,)」
毎日書いてる准教授と学生、ときどきポッキー教授の漫才纏めたら本になりそうです(*´∇`*)
2. Posted by Minorpoet 2012年02月28日 22:33
オスカーさん こんばんは♪
レイナとブルースふたりには「何が」見えているのか、「愛なのか」それとも「憎しみ」・・・・。
そこにはレインハートの想いも届かない、突然と巻き起こる突風、ヒュームを連れ去る「アキラ」の目的は。。。。(てな妄想で)
レイナとブルースふたりには「何が」見えているのか、「愛なのか」それとも「憎しみ」・・・・。
そこにはレインハートの想いも届かない、突然と巻き起こる突風、ヒュームを連れ去る「アキラ」の目的は。。。。(てな妄想で)
3. Posted by オスカー 2012年02月28日 23:17
§ kouchanさま
コピー本で夏コミ参戦したらどうかしら
ポッキーでなくプリッツのグリコアーモンドキャラメル味を食べました~うん、キャラメルだった(笑)
§ Minorpoetさま
レンハートも別にノーマルで良かったのに違う方向に~アキラは完璧に脇役です!(笑)
コピー本で夏コミ参戦したらどうかしら

§ Minorpoetさま
レンハートも別にノーマルで良かったのに違う方向に~アキラは完璧に脇役です!(笑)