昔むかし~フジテレビで曽野綾子さんの小説『天上の青』が原作のドラマを放送していました。主演は山口果林さん。メロドラマの時間帯のわりには色恋ではなく、社会派な感じで…熱心に見ていました(((^^;)その時はじめて「天上の青」と呼ばれる色の朝顔があることを知りました。


いつか「天上の青」というこの言葉を使った話を書きたいと思っていたので、ブルースの瞳は迷わずこの色に決定!アヤが彼の瞳について語る場面は物語の中で一番好きかも(^.^)


「ご都合主義は作者の特権!!」的な展開のちょっと長い最終回になってしまいましたが、今の私にはいっぱいいっぱいなのでお許しを(;_;)最後までブルースとアヤを見守って頂き、本当にありがとうございました。感謝しますm(__)m


<ヘブンリーブルー>
http://www.ohiwafg.com/heavenly%20blue.html


『翼あるもの』最終回


道を少しでも外れると深い森にのみこまれてしまいそうなところに、その教会はあった。そこでは奇妙な音楽会が開催されている。銃声、怒号、絶叫、慌ただしい靴音、そして赤い小さな花が朽ちかけた床や柱、庭先にも咲き乱れはじめた。
「ブルース、大丈夫か!?」撃ち抜かれた左肩の痛みに耐え、生死を共にしてきた男の声を聞きながら、彼は鏡の前で髪をとかすアヤの幻を見ていた。


ずいぶん長い間、彼女の後ろ姿を見つめていたらしい。微笑みながら当然の質問を投げ掛けられた。
「どうしたの?」
「いや…天使がいるなら、こんな姿なのかもしれないな、と思ってさ」
ベッドサイドに腰かけシャツをはおりながら返事をする。身支度を整えたアヤも隣に座り、まばたきもせずに彼を見つめた。
「私が天使に見えるとしたら、あなたの中にいるからよ。ヘブンリーブルーのその瞳の中に…もし私が死んだら、本当の天使になっていつでもあなたを護るわ」
「おい」
ブルースは少しきつい口調になった。
「大丈夫よ。そんな顔しないて。死ぬつもりならとっくにそうしてた」
「アヤ…」
「でも、これは持っていって。あなたをいつも護ってくれますように」
彼女は小さな銀の十字架を渡した。それが意味するところを彼は知っている。ヒュームも馬鹿ではない。そろそろオレが目障りになってきた頃だろう。
「また私のところに戻ってきてくれるでしょう?」
「ああ」
そう返事をしたが、雲行きがあやしい…ブルースは思った。


「とにかく今はここから逃げることだ。行くぞ。走れるか?」
レンハートは負傷したブルースをかばいながら、安全な場所へ移動しようとする。銃弾をよけながら道を探さねばならない。射撃の名手とはいえ、この状況では思うように銃口が定まらない。憤りの表情とともに口から感情が飛び出す。
「アキラのバカ!あの野郎、何やってんだ!!」
怒号に反応したのか、レンハートの頬にうっすらと赤の印がつけられた。
「ヒュームの目的はオレだけだろう。お前まで巻き込んで悪かったな。…行ってくれ」
「ブルース!?」
「行ってくれ!!」
そう彼が叫んだのと同時に、今までにない大きな爆発音が響いた。“おとなしくしろ”“逮捕状だ”という声も聞こえる。
「やっと来たか……おい、ここから動くなよ」
目で返事をしながら“そんなに自由がきく状況じゃない”と思う。近くにある大木に身体を預ける。大きく息をすると胸が痛み、咳き込んだ。
(血の味がする…)
苦しさに顔をあげると、木々の間を縫うようにして太陽の光が射し込んできた。


(天上への階段ってヤツか?……アヤ、お前に逢ってお前を愛せたからこんなオレでも天使になれるかもな…あの時、オレはお前を連れていかなくてよかったんだと思う。離れていたからまた逢えて……オレは自分を許すことが出来た。親父、おふくろ、感謝するよ。オレにアイツを映す瞳をもたせてくれたことを)
重くなった身体が地面と接吻しようとするのを抱きとめてくれる何かがあった。それを確認出来ないままブルースは意識を手放した。


ヒュームの部下として従順に働いていたアキラは麻薬の密輸・売買を摘発する南米政府機関のおとり捜査員だった。レンハートの父親は同関係機関の顧問である。レンハート自身は別の政府機関に勤務し、一時退職した。捜査員として活動を再開したのはブルースと出会った頃だ。まだ3年にも満たない。今回は私情が絡んだこともあり、自分でも展開の予測を誤ったと反省している。しかし、のらりくらりとして逃げ回っていたヒュームを逮捕したことは今度の捜査に大いに役立つだろう。結果的にブルースの父親の仇もとったことになる。彼は銃を己の保身以外に使ったことはないし、他の所行もわざわざ牢屋へ入ってもらうことでもない。自分の知らないこともあるだろうが、法によって裁かれるのは本当の悪人であるべきだ。


レンハートは戦友のもとへ行った。頭に巻かれた包帯には少し血がにじんでいたが、彼には関係ないらしい。「動くなよ」と言って別れた場所でブルースは応急処置をうけていた。手際よく医師の指示に従っているのはアキラの同僚で、婚約者でもあるジュリ。アヤを連れてきたのも彼女だ。
(オレの出番はなさそうだな……まぁよしとするか)


『レイナ』はしばらくして取り壊された。街全体の観光開発事業がきまり、土地は寄付することにした。淋しさはあったが、父も母もこの街を国を愛していたと思うので、新しい発展を喜んでくれているはずだ。


別の場所で小さな店をはじめた。ふたりで暮らしていくのには何の不自由もない。ブルースの母親は息子の新しい旅立ちを理解したのか、事件の半年後に天へ昇っていった。彼と同じ「天上の青」の瞳を持つ彼女も新米天使として働いていることだろう。


さぁ、そろそろ例のがはじまりそうだ。
「アイツの髪に柔らかい木漏れ日があたると金色に輝いて、天使のように見えるんだ。オレは無神論者で堕天使かもしれないが、アイツの翼はいつも変わらずオレを包んでくれるんだ」
そのまま眠ってしまった彼の背中に彼女はいつものように上着をかける。その背中に羽根は見えたかい? 誰でも翼は持っていると思うんだが、君はどう思う?



☆長い間(でもないか!?)お付き合いありがとうございました☆