2015年05月22日
碧雲便りNo.22:緑の日々~君のいた日々
新聞コラムでミステリーの女王アガサ・クリスティが結婚していたことに驚いたワタクシ……ナゼかずっと彼女は独身だと思っていました(^o^;) ダンナ様は考古学者というのもまたビックリ!! バリバリのビジネスマンとか想像していました。彼女の本をきちんと読んだことがないから想像力が貧困なのかしら……。
「女性にとって最良の夫は考古学者に決まっています。妻が年を取るほど、夫が興味を持ってくれるでしょうから」という名言も紹介されていました。古美術商だったら「古くて美しいもの」が好きで大変だわ~なんてまた違うことを考えてしまいました。
この前、マンガ家の近藤ようこさんの描かれた表紙にひかれ、藤野千夜さんの『君のいた日々』を買って読みました。妻を亡くした夫と夫を亡くした妻、ふたりが出逢ってまた新しい人生を…ではなくて、登場人物は変わらない……そう、「妻を」「夫を」失ったそれぞれの世界の物語なのです。昨年薬師丸ひろ子さんが奥さん役で『ハルナガニ』というタイトルで舞台になっていました。
主人公は、1975年、中学2年生のときに同級生だった春生と久里子。在学中は、当時の大ヒット映画「タワーリング・インフェルノ」について一度だけ言葉を交わしたことがある程度の仲。ちなみに私はこの時小5ですが、この映画は記憶にあります…スゴい怖い!と思っていました。ノストラダムスの大予言やUFOもブームだったし。
さてさて、社会人になってから再会して結婚したふたり。ひとり息子の亜土夢と家族3人、しあわせに暮らしてきましたが、その結婚生活は18年11ヶ月で終わりを告げます。夫婦の片方が病気で先立ったために……。50歳を前に経験した配偶者の死。最初は妻をガンで亡くした春生視点で、次はちょっとしたことで意地悪な気分になり朝の見送りをしなかった、その日に夫を失ってしまった久里子視点にうつり、交互に話が進みます。
春生は、妻の葬儀の後に部屋の蛍光管を交換しますが、それがまたすぐにちらつきはじめたのを見て妻のメッセージだと思います。高校1年生の息子に、照明器具ごと買いかえろと言われても踏み切ることが出来ない。涙もろくなった春生は、息子に「泣きおやじ」とあだ名をつけられている。 久里子は、夫の死後、ときどき床が鳴るのを「みしみしさん」と名づけ、なにかにつけ「春さん」を思い出し、息子に「きもい」と言われている。そんな息子だけれどどちらの物語でも母(父)の死を悲しみ、耐えている姿がうかがえます。
一周忌の法要から物語はスタートして、時間薬というのでしょうか、悲しんでいるばかりではなく、勤務先の美人OLに誘われて浅草の人気天ぷら屋の行列に並んだり、姉にもらったルンバ(のようなお掃除ロボット)を使ったり……老舗の鰻屋で義理の姉と会食したり人形焼きを買ったり、パートを始めたり……と、日々はなんでもなく過ぎていきます。
お互いの回想シーンに夫婦間共通の話題が出てくることもあります。たとえば27歳の久里子に「ね、加部君。今から駅弁食べに行こうよ」と“まるでカンチを誘う赤名リカのような奔放な口ぶりで誘われ”て、春生が新宿・京王百貨店の駅弁大会に出かけたときの話など。またユーミンの歌とか歌詞とか、あった、あったよね!!と共感出来てうなずいてしまう。いつか自分がその立場になった時に、そういう小さな記憶の積み重ね、夫婦の歴史を思い出すのかなぁ……ダンナも私がいなくなったら思い出してくれるのかなぁ……と思ったり。きっと「天丼の海老をひとつわけてあげた」とか「ラーメンを食べに連れていった」とか「コンビニでいつもプリンのおみやげを買ってやった」とか食べ物がらみのことばかりなんだろうけど( ̄▽ ̄;)
「ねぇ、久里子。もう二度と会えない人がいるって、きっと一生かけて覚えて行くんだろうね。人間って、そのために生きているんじゃないかな」と仏壇に話しかける春生の言葉にとてもせつなくなりましたが、読み進めて最後はとても前向きというかほんのりあたたかい気持ちになれました。
久里子が共通の友人に「なんでこんなにさびしいのかなぁ」と言うと「それはさぁ、幸せだったからじゃないの?」と。そして「そうか。そうだね」って……この場面はとても好きです。義理のお姉さんが反省とか後悔とか多いという彼女に「思い出すなら、せめて楽しかったことにしなさいよ。自分がすごく、春生によくしてあげられたこととか。あるでしょ、そういうのも」という場面とかも、まわりの人たちのさりげない思いやりと現実的なアドバイスに「はい」とこちらも返事をしたりして……。
♪確かに今 振り返れば 数え切れない哀しい日々 でもあの時あの夜あの頃 ふたりはいつもそこに居た……
この話を読んで、結婚に憧れがいっぱいだった頃(笑)よく聴いていたオフコースの『緑の日々』を思い出しました。
♪君となら生きてゆける 君の為に僕が生きてゆく……
『君のいた日々』はこれから自分が生きていく日々につながる………頑張ろっと(*^-^*) 皆さまもキラキラが生い茂るした緑の日々をお過ごし下さいませ。
「女性にとって最良の夫は考古学者に決まっています。妻が年を取るほど、夫が興味を持ってくれるでしょうから」という名言も紹介されていました。古美術商だったら「古くて美しいもの」が好きで大変だわ~なんてまた違うことを考えてしまいました。
この前、マンガ家の近藤ようこさんの描かれた表紙にひかれ、藤野千夜さんの『君のいた日々』を買って読みました。妻を亡くした夫と夫を亡くした妻、ふたりが出逢ってまた新しい人生を…ではなくて、登場人物は変わらない……そう、「妻を」「夫を」失ったそれぞれの世界の物語なのです。昨年薬師丸ひろ子さんが奥さん役で『ハルナガニ』というタイトルで舞台になっていました。
主人公は、1975年、中学2年生のときに同級生だった春生と久里子。在学中は、当時の大ヒット映画「タワーリング・インフェルノ」について一度だけ言葉を交わしたことがある程度の仲。ちなみに私はこの時小5ですが、この映画は記憶にあります…スゴい怖い!と思っていました。ノストラダムスの大予言やUFOもブームだったし。
さてさて、社会人になってから再会して結婚したふたり。ひとり息子の亜土夢と家族3人、しあわせに暮らしてきましたが、その結婚生活は18年11ヶ月で終わりを告げます。夫婦の片方が病気で先立ったために……。50歳を前に経験した配偶者の死。最初は妻をガンで亡くした春生視点で、次はちょっとしたことで意地悪な気分になり朝の見送りをしなかった、その日に夫を失ってしまった久里子視点にうつり、交互に話が進みます。
春生は、妻の葬儀の後に部屋の蛍光管を交換しますが、それがまたすぐにちらつきはじめたのを見て妻のメッセージだと思います。高校1年生の息子に、照明器具ごと買いかえろと言われても踏み切ることが出来ない。涙もろくなった春生は、息子に「泣きおやじ」とあだ名をつけられている。 久里子は、夫の死後、ときどき床が鳴るのを「みしみしさん」と名づけ、なにかにつけ「春さん」を思い出し、息子に「きもい」と言われている。そんな息子だけれどどちらの物語でも母(父)の死を悲しみ、耐えている姿がうかがえます。
一周忌の法要から物語はスタートして、時間薬というのでしょうか、悲しんでいるばかりではなく、勤務先の美人OLに誘われて浅草の人気天ぷら屋の行列に並んだり、姉にもらったルンバ(のようなお掃除ロボット)を使ったり……老舗の鰻屋で義理の姉と会食したり人形焼きを買ったり、パートを始めたり……と、日々はなんでもなく過ぎていきます。
お互いの回想シーンに夫婦間共通の話題が出てくることもあります。たとえば27歳の久里子に「ね、加部君。今から駅弁食べに行こうよ」と“まるでカンチを誘う赤名リカのような奔放な口ぶりで誘われ”て、春生が新宿・京王百貨店の駅弁大会に出かけたときの話など。またユーミンの歌とか歌詞とか、あった、あったよね!!と共感出来てうなずいてしまう。いつか自分がその立場になった時に、そういう小さな記憶の積み重ね、夫婦の歴史を思い出すのかなぁ……ダンナも私がいなくなったら思い出してくれるのかなぁ……と思ったり。きっと「天丼の海老をひとつわけてあげた」とか「ラーメンを食べに連れていった」とか「コンビニでいつもプリンのおみやげを買ってやった」とか食べ物がらみのことばかりなんだろうけど( ̄▽ ̄;)
「ねぇ、久里子。もう二度と会えない人がいるって、きっと一生かけて覚えて行くんだろうね。人間って、そのために生きているんじゃないかな」と仏壇に話しかける春生の言葉にとてもせつなくなりましたが、読み進めて最後はとても前向きというかほんのりあたたかい気持ちになれました。
久里子が共通の友人に「なんでこんなにさびしいのかなぁ」と言うと「それはさぁ、幸せだったからじゃないの?」と。そして「そうか。そうだね」って……この場面はとても好きです。義理のお姉さんが反省とか後悔とか多いという彼女に「思い出すなら、せめて楽しかったことにしなさいよ。自分がすごく、春生によくしてあげられたこととか。あるでしょ、そういうのも」という場面とかも、まわりの人たちのさりげない思いやりと現実的なアドバイスに「はい」とこちらも返事をしたりして……。
♪確かに今 振り返れば 数え切れない哀しい日々 でもあの時あの夜あの頃 ふたりはいつもそこに居た……
この話を読んで、結婚に憧れがいっぱいだった頃(笑)よく聴いていたオフコースの『緑の日々』を思い出しました。
♪君となら生きてゆける 君の為に僕が生きてゆく……
『君のいた日々』はこれから自分が生きていく日々につながる………頑張ろっと(*^-^*) 皆さまもキラキラが生い茂るした緑の日々をお過ごし下さいませ。
この記事へのコメント
1. Posted by Kay 2015年05月22日 12:00
こんばんわ。
今夜はオスカーさんの文章を読んでいて、暖かなきもちになりました。
オットは、私の何を覚えていてくれるのだろう?
私は、多分、今はちょっと腹立たしいことが、懐かしいことになるのだろうなあ。。。と思います。うん、ひねくれていますね。
若いときの私と今の私、きっと覚えていたいオットの姿が違うような気がします。
久しぶりにオフコース、聞いてみます。
今夜はオスカーさんの文章を読んでいて、暖かなきもちになりました。
オットは、私の何を覚えていてくれるのだろう?
私は、多分、今はちょっと腹立たしいことが、懐かしいことになるのだろうなあ。。。と思います。うん、ひねくれていますね。
若いときの私と今の私、きっと覚えていたいオットの姿が違うような気がします。
久しぶりにオフコース、聞いてみます。
2. Posted by ミューちゃん 2015年05月22日 16:49
オスカーさん、こんにちは
僕は今、30代の折り返し地点を過ぎ、少しだけ結婚願望が強くなって来たように思えます。まぁ、身内に別れてはないとは言え、どう見ても結婚に失敗してる人が居るから、迷ってしまうのですが…オフコースの曲だと僕は「YES-YES-YES」が好きですね
僕は今、30代の折り返し地点を過ぎ、少しだけ結婚願望が強くなって来たように思えます。まぁ、身内に別れてはないとは言え、どう見ても結婚に失敗してる人が居るから、迷ってしまうのですが…オフコースの曲だと僕は「YES-YES-YES」が好きですね
3. Posted by のざわ 2015年05月22日 19:28
オスカーさん、こんばんは。
「君のいた日々」の感想を読ませていただきました。
すらすらと文が流れるようです。
アガサクリスティの家があるイギリス南部の海沿いの街トーキーに行ったことがあります。
ただそれだけですが、20代の頃の思い出がよみがえります。
「君のいた日々」の感想を読ませていただきました。
すらすらと文が流れるようです。
アガサクリスティの家があるイギリス南部の海沿いの街トーキーに行ったことがあります。
ただそれだけですが、20代の頃の思い出がよみがえります。
4. Posted by 猫ムスメ 2015年05月22日 19:38
アガサクリスティ、最初の夫は確か貴族か何かだったと思います。
その結婚は謎に包まれていて、離婚後しばらくは(クリスティが)行方不明になっていたとか…
結局どこで何をしていたのか本人も最後まで明かさず「空白の○○年」と言われている……みたいな話を以前あとがきで読みました(だいぶ昔の事なんで間違っていたらすいません!)笑
再婚した考古学者の夫とは幸い上手く行き、仲の良い夫婦だったらしいですね
その結婚は謎に包まれていて、離婚後しばらくは(クリスティが)行方不明になっていたとか…
結局どこで何をしていたのか本人も最後まで明かさず「空白の○○年」と言われている……みたいな話を以前あとがきで読みました(だいぶ昔の事なんで間違っていたらすいません!)笑
再婚した考古学者の夫とは幸い上手く行き、仲の良い夫婦だったらしいですね
5. Posted by 見張り員 2015年05月22日 22:42
こんばんは
「君のいた日々」なんか切ないですね…思えば昨年の今頃はまだ父親は生きていました。まだ入院させる前でした。なんか一年もたったのにしきりにあの頃を追っています。弱いなあ私ってと思います。
父のいた日々をなぞっている一年後。
「君のいた日々」なんか切ないですね…思えば昨年の今頃はまだ父親は生きていました。まだ入院させる前でした。なんか一年もたったのにしきりにあの頃を追っています。弱いなあ私ってと思います。
父のいた日々をなぞっている一年後。
6. Posted by オスカー 2015年05月23日 08:09
§Kayさま
いろいろありますが、最期は「ふふっ」となるような楽しいことばかり思い出してもらえたらいいなぁと考えます。ダンナはいつも私が「食べている姿しか思い出せない」と言っています(-_-;) ブログで知り合った方には違う私を記憶してほしいです(笑)
いろいろありますが、最期は「ふふっ」となるような楽しいことばかり思い出してもらえたらいいなぁと考えます。ダンナはいつも私が「食べている姿しか思い出せない」と言っています(-_-;) ブログで知り合った方には違う私を記憶してほしいです(笑)
7. Posted by オスカー 2015年05月23日 08:13
§ミューちゃん様
高校になったら急にオフコースを聴く人が増えて驚きました(笑) 歌詞におおっ!となるドラマがあっていいですよね。
高校になったら急にオフコースを聴く人が増えて驚きました(笑) 歌詞におおっ!となるドラマがあっていいですよね。
8. Posted by オスカー 2015年05月23日 08:20
§のざわ様
春生の女々しさというか久里子が大好きな気持ちがジワジワきて、やはりダンナより先には…と思ったり。作家や作品が生まれた場所をめぐる旅とかしてみたいです
春生の女々しさというか久里子が大好きな気持ちがジワジワきて、やはりダンナより先には…と思ったり。作家や作品が生まれた場所をめぐる旅とかしてみたいです
9. Posted by オスカー 2015年05月23日 08:28
§猫ムスメ様
アガサの人生にビックリしました!知らなかったです。検索したら皆さん、いろんな説(?)を書いていて、ほぉ~と勉強になりました。♪ミステリ~ナ~イル!とか映画のコマーシャルは覚えていますが、本は読んでいないのでこの夏の課題図書にしようかしら(笑)
アガサの人生にビックリしました!知らなかったです。検索したら皆さん、いろんな説(?)を書いていて、ほぉ~と勉強になりました。♪ミステリ~ナ~イル!とか映画のコマーシャルは覚えていますが、本は読んでいないのでこの夏の課題図書にしようかしら(笑)
10. Posted by オスカー 2015年05月23日 08:33
§見張り員さま
親しい誰かをなくした直後ではなく、一年後からの話というのがこの作品のポイントではないかと…大事な人って自分の中にいつまでも存在していて、自分の一部に溶け込んでいくんだぁと思いました。
親しい誰かをなくした直後ではなく、一年後からの話というのがこの作品のポイントではないかと…大事な人って自分の中にいつまでも存在していて、自分の一部に溶け込んでいくんだぁと思いました。
11. Posted by なう60 2015年05月23日 09:09
おはようございます。
ミニ同窓会のメンバーの女性10名ほどですがご主人が逝去されている方、4名いますが「ご主人の思い出」
「良かったご主人の思い出」聞かされます。しかしながらご主人を亡くしている姉御曰く「奥さんにあまり優しくしないでょ。いつまでも心残りの旦那は、駄目よ。亡くなって少しは、せいせいする位が奥さん孝行ですょ。」それと「男やもめは見ておられん。旦那は、先に逝くべし。」元看護師の経験に基づくアドバイスです。(笑)
ミニ同窓会のメンバーの女性10名ほどですがご主人が逝去されている方、4名いますが「ご主人の思い出」
「良かったご主人の思い出」聞かされます。しかしながらご主人を亡くしている姉御曰く「奥さんにあまり優しくしないでょ。いつまでも心残りの旦那は、駄目よ。亡くなって少しは、せいせいする位が奥さん孝行ですょ。」それと「男やもめは見ておられん。旦那は、先に逝くべし。」元看護師の経験に基づくアドバイスです。(笑)
12. Posted by オスカー 2015年05月23日 10:12
§なう60様
人生の先輩方、特におねえさま方(笑)のお話はとっても参考になります~殿方にはちょっとせつないかもしれませんが……ダンナのために1日は長生きしたいと思います(^^;)
人生の先輩方、特におねえさま方(笑)のお話はとっても参考になります~殿方にはちょっとせつないかもしれませんが……ダンナのために1日は長生きしたいと思います(^^;)
13. Posted by ゆちあ 2015年05月23日 20:28
なんだかとても素敵な物語ですね。夫婦って難しい関係だと思います。終わってみないとわからないことってたくさんあるんでしょうね。何気ない日々が思い出の一場面になっていくのかなぁ~。
機会があれば読んでみます。
機会があれば読んでみます。
14. Posted by オスカー 2015年05月23日 21:40
§ゆちあ様
今日は『四十九日のレシピ』を読み終わったのですが、夫婦の絆という点では物足りないというか、登場人物にのめり込めなかったです。読むタイミングもあるのでしょうね(;´д`) 単行本カバーより文庫カバーの方が絶対いいので、表紙だけでも見て下さいね(^.^)
今日は『四十九日のレシピ』を読み終わったのですが、夫婦の絆という点では物足りないというか、登場人物にのめり込めなかったです。読むタイミングもあるのでしょうね(;´д`) 単行本カバーより文庫カバーの方が絶対いいので、表紙だけでも見て下さいね(^.^)