アカシアの雨がやむとき

2011年05月31日

第504号:風のかたみ歌

♪アカシアの雨にうたれて~この歌がテーマソングのような、東京下町の「アカシア商店街」ここは不思議なことが起こる場所…そんな短編集『かたみ歌』を読み終わりました。


作者の朱川湊人さんは私よりひとつ年上なのに、あの懐かしい昭和の情景、情感の描写がとても優しく素晴らしいです。

帯に「涙腺崩壊」とあり、こういう大袈裟なコピーはイヤなんだけどな~と思いながら買ったのは、カバーイラストの力もあります。下町のアーケード、店の感じがたまりません!!東京で最初に住んだ荒川区、都電の三ノ輪駅近くの中華料理店でバイトをしていたこともあるし…あの商店街も屋根があった(笑)

でもやっぱり作品のタイトルに単純にひかれたのかも…福永武彦さんの『風のかたみ』は高校時代から読みたい!!と思いながら読んでいないので(~_~;)せめて似たタイトルを…なところがあった!?(爆)

7編通して登場する古本屋のオジサン、外見は芥川龍之介が年齢を重ねた感じのいかにも…な男性。彼にも、もちろん他人が知らないドラマがあり~それは最後に明かされるのですが~そこにいくまでの微妙に小出しにされた伏線がニクい!!(←死語!?)

あの世とこの世をつなぐ井戸のあるお寺っていくつかききますが、この商店街近くの覚知寺もそう。キープレイスですね。親子心中した女の子が首を絞められた後を「ネックレス」というのは切ないけれど…(T-T)

一番好きなのは『夏の落とし文』です。昔は神隠しとかそんな言葉もありましたよね。兄弟愛に涙。そして『栞の恋』古本にはさんだ栞を介しての文通、淡い恋心の思いがけない結末。漫画で読んでみたい作品!!

商店街で暮らす人、関わりのあった人たち…みんながしあわせに暮らしてほしい、どこかにこんな場所があってほしい、いや今もあると信じたい~そんな『昭和』あふれる一冊でした。



rohengram799 at 14:17コメント(11) 
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