ダモイ

2016年01月09日

祥雲便りNo.5:東京ダモイ

『成人の日の盛装の仮装めく』(佐藤琴)


《成人式「きちんとした服装で」奇抜な衣装に苦情》
北九州市は、10日に北九州メディアドーム(小倉北区)で開く成人式に参加する出席者に対し、「きちんとした服装」で参加するよう、異例の呼びかけを行った。


イヤイヤ、もう小学生の入学式ではあるまいし……北九州市のサイトには「成人式を迎えるにあたって」なんて項目があり、振袖を着た場合の立ち振舞いとかまであって、なんなんだろう……と思ってしまいました。選挙権18歳からは本当にいいのか?と頭を抱えてしまいます。北九州市以外でもこういう注意をしている自治体はあるのでしょうか?

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『戦争を知らぬこの子や成人の日』(黒川悦子)


今日は『東京ダモイ』(鏑木蓮)という2006年に第52回江戸川乱歩賞を受賞した小説を読んでいます。ダモイやラーゲリという言葉を聞いたことがある若者も多いと思いますが、シベリア抑留に関連したミステリーです。

氷点下50度の俘虜収容所でのシベリア抑留の中で鴻山中尉が首を一刀両断にされた死体となって発見される。犯人は判らずじまい。そして58年後、死体の発見者であり日本に戻った高津元二等兵がシベリア抑留生活を詠んだ俳句集を自費出版しようとしていた時期に、俘虜収容所で看護婦(あえてこの字にしました)ロシア人女性マリアが舞鶴港で死体となり発見され、彼女と同行していた日本人男性は行方不明になり、高津も姿を消してしまう。二つの事件に関わりはあるのか。当時のことを綴った高津の句集が事件をつなぐ手がかりとなり……極寒の地で何が起こったのか? 

ロシア語のдомой(ダモイ)は本来「家に」という意味で、それを広く解釈して「故郷に・国に」という意味にも使われます。動詞を伴わずに単独で使われた場合は「帰る」の意味であることが多いですが、一緒に使う動詞によって「家に(電話する)」「家に(荷物を送る)」などの意味にも使うそうです。またдавай(ダヴァイ)は、動詞даватьの命令形です。この動詞自体が様々な意味を持つので、その命令形も文脈によって色々な意味になるそうです。シベリア抑留体験者の方が書かれた文章でこの言葉が出てきたものがありました。


【私達が一番先に耳にしたロシヤ語が『ダワイ』と『ダモイ』でした。『ダワイ』は実に使用範囲の広い便利な言葉である。○○をせよ・○○しろ。と命令するのも「ダワイ」持っている品物をこちらに「よこせ」も「ダワイ」。
急げ!も「ダワイ・ベストレ」寝ろ!も「ダワイ・スパーチ」此所へ「ダワイ・シュダー」全ての動詞の上につけて使える様である。(これは私の体験の上からります。単に「(何かを)くれ」という意味のこともありますし、相手の動作を促す場合や、一緒に何かをしようという呼びかけ、相手の提案に対する同意の意味で使われることもあります。】


香月泰男の描いた『青の太陽』マンガの『凍りの掌(て)』同じくマンガで読んだ辺見じゅん著の『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』など……シベリア抑留関係のものはほんの少しは読んだことのある私ですが、この作品からまだまだ感じとらねばならぬことがたくさんあるようです。作品中に出てくる俳句は作者オリジナルだと思いますが《閻王も白き火を吐く凍原や》など極寒の地であることが絵的にもよくわかる表現だと思いました。どんなラストが待っているのか……明日にかけてじっくり読んでいきます。


今日から三連休の方もいらっしゃるでしょうか、風邪などひきませんようにあたたかくしてお過ごし下さいませ。





rohengram799 at 18:07|PermalinkComments(8)
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