中島要

2016年10月22日

徳雲便りNo.15:三時のおやつは『かりんとう(侍)』にしましょう

真夏のような日があったかと思えば、一気に冬になる!?みたいな気温の変化に身体がなれないですね。お風呂でゆっくりしたい……!


ウチはNORITZの給湯器に変えたんですが「お風呂がわきました」の時に流れるメロディ、あれは『人形の夢と目覚め』という、19世紀ドイツのピアノ教師テオドール・エステン(セオドア・オースティン Theodore Oesten/1813-1870)が作ったピアノ曲の一部なんだとか。。楽譜の音符が読めて両手が使えるようになったぐらいのレベルで習得可能だそう。ピアノを習っている人はすぐわかったんだろうなぁ~。私はずっと専用に短いフレーズを作ったんだと思っていました。他のメーカーさんはどんなメロディなんでしょう?



ピーナッツを放り投げて食べるように、かりんとう(には見えないかも)を投げて食べようとするお侍さんが描かれた、全体的に水色のさわやかな表紙が気にいって買った『かりんとう侍』(双葉文庫)。うろこ雲便りNo.22:多少の違いはあっても…(^-^)にも書いた『しのぶ梅 着物始末暦』の作者・中島要さんです。『しのぶ梅』シリーズもかなり出ていますが、読んでないなぁ(; ̄ー ̄A



黒船が来航し、時代が大きく変わろうとしている幕末のお江戸で、日々かりんとうを食べることだけが楽しみのような、旗本の次男坊・雄征。子どもがいない兄の家督を継ぐことになるだろうし、粋な柳橋の人気芸者にナゼか惚れられているし、もうずーっとこのまま甘~い毎日が続くと思っている、真面目といえば真面目なんだけど、人の気持ちに疎い、空気が読めないおぼっちゃんなノンキ者であります。


友人のひとりが切腹騒動を起こし、今度は失敗しないから介錯をしてくれと頼まれ、さぁどうする!?………イヤだ、表紙はあんなに、ほよよん(*´∀`)♪とした雰囲気なのに、どシリアスなのか?と焦ってしまいましたが、そんなことはありませんでしたわ。友人は離縁させられた元・嫁と逃避行~!


女心が理解出来ない彼ですが、意気投合した駆け出しの戯作者・鈍亭魯文と淀橋水車小屋跡の幽霊騒ぎなどに関わって、ちょっとずつ世間のことを知り、なかなか刺激的な日々を過ごします。その間もかりんとうは欠かさない! 子どもがいつでも変えるように値上げはしない頑固おやじ。このおやじとの関わりが後半に活きてきますが、それは読んでのお楽しみで(笑)


やがて義姉が懐妊し、跡取りの夢は破れ、婿養子の話が持ち上がると友人だと思っていた人物から「なんでお前なんかが…」と見下されていたことがわかり……色々あって己の未熟さに凹んでいるところに安政三年の大地震が起きます!


今までボンヤリだった彼は、地震前後の記録に没頭します。「虚実ないまぜの噂の中から、己が聞いたこと、見たことをそのまま書き記すのは、この災厄を知らない後の子孫が枕を高くして眠れるようにするためだ。」「この先、江戸が火事や風水害に見舞われたとしても、広く世間に出回った『安政見聞誌』は必ずや後世に伝わるはずだ。序文の言葉通り、後の子孫が身を守る一助となるに違いない。」………熊本・大分の地震から半年過ぎたと思ったら、鳥取での地震。驚きました。自然災害はいつどんな形でどこに起こるか、完全に予測・予知することは出来ませんが、過去の記録から学べることはたくさんあるはず。また人それぞれにお見舞いの気持ちを表す、出来ることがあると思うので、それを考えて行動していきたいと思います。



義姉の妊娠の時に「ずっと子どもが出来なかったのに、おかしくない? 弟が父親じゃないの?」という心無い噂を流したのが、同じ立場で慰め励ましてきた友人だったとか……今もこういう妬みやひがみからの無責任な噂話をする人っていますよね。そんなことをしてもなにもならないのに。



《男はすべて女より生まれた子供のなれの果てでしょう。ならば女子供を大事にすべきではありませんか》


雄征がこう話す場面があるのですが、登場する女性はみんなそれぞれたくましいかな~と思いました。魯文のおかみさんも亭主のことをよくわかっているし、雄征の尻を叩く鶴次も男前だ(笑)。


池波正太郎センセーの『おせん』もいろんな立場、年代、容姿の女性が出てきました(13作品収められています)。したたかだったり、ズルかったり、強かったり(心身ともに!)けなげだったり、欲深だったり……でもなんか憎めなくて、それぞれの人生を応援し見守りたいというか……。もっと時間がかかるかなと思っていましたが、あっという間に読み終わってしまいました。


表題作の「おせん」「三河屋お長」「あいびき」「平松屋おみつ」など特にお気に入り……いやいや他のも捨てがたいわ、やっぱり全部オススメ、素晴らしいです(≧∇≦)





rohengram799 at 14:44コメント(6) 

2016年10月16日

徳雲便りNo.11:甘いもんでもおひとつ

通勤時に見かける人たちの服装が秋っぽい色合いになってきました。「桜紅葉」「柿紅葉」「花紅葉」という言葉がありますが、夏は緑の輝きを愛で、秋には虫食いの葉にも風情を感じ……銀杏はまだまだですが、気がつけば黄金色になっているかも! 秋の楽しみはあちこちにありますね。


以前コメントにて猫ムスメ様からオススメいただいた、花のお江戸を舞台におっとりした菓子職人の兄、商才に長けた弟が菓子屋を切り盛りする『甘いもんでもおひとつ』(田牧大和)を読みました。「読書の秋「食欲の秋」そして和菓子の美しさに「芸術の秋」を感じる、見事に三点セットになった一冊(≧∇≦) 猫ムスメ様、ありがとうございます!


お店の名前は「藍千堂」といって、まだまだ新興の上菓子屋……ではなく、実は兄弟は大店「百瀬屋」の御曹司だったのです。先代の主人(兄弟の父)が亡くなった後、しばらくして叔父に「百瀬屋」を追い出されることに……! 先代の片腕だった茂市という、無口で不器用な職人さん(じいさん好きにはたまらない!)も兄弟と一緒に働いています。叔父とは険悪ですが、兄弟にとって従妹にあたるお糸はしょっちゅう「藍千堂」に顔を出しています。


叔父さんはなぜ甥たちに冷たくあたるのかは、いろんなクセのある登場人物たちと、美味なるお菓子たちに心奪われながら読み進めていくとわかります。一話目の柏餅から食べたい気持ちがモクモクと沸き上がってスーパーやコンビニでも和菓子コーナーに目がいってしまう(笑)


「ハレの日の江戸の街の季節感を描きたいと思っていました。今の日本ではハロウィンやクリスマスが楽しまれていますが、古来の五節句というのは、ずいぶんと派手で楽しそうなんですよ。七夕などは、天に願いを届けようと、競いあうように、屋根の上高くに竹を掲げ、夢を描いた短冊をくくりつけたようです」とインタビュー記事土で読みました。七夕の様子は浮世絵にも残っていますね。「お菓子って、なくてもいいかもしれないですが、美味しいものを食べると理屈抜きにホッとするし、顔がほころびますよね」……和菓子を食べている顔と、大好きな人と過ごしているときの表情は似ている……どちらも最高にシアワセ(´∇`)


続編はハードカバーで発売中……人日(じんじつ:七草粥を食べる)・上巳(じょうし)・端午(たんご)・七夕(しちせき)・重陽(ちょうよう)といった五節句を題材に、それぞれの風物詩である和菓子が登場するそうな。そしておっとり兄ちゃんの恋物語も……!? 弟はせつない結果になりましたが、兄ちゃんはどうなるのか……文庫になるのはまだまだ先でしょうが、こちらもまた楽しみに待つことにします。



この本をきっかけに、私の中では時代小説ブームが到来! 先に感想を書いた『ゆめ結い』(イマイチでしたが)続けて葉室麟さんの『風花帖』中島要さんの『かりんとう侍』(感想はいずれまた)を読んで、今は西條奈加さんの『閻魔の世直し』……これは『善人長屋』の続編ですが、前作を知らなくても楽しい作品。 その次も何冊か控えております! 皆さまも甘いものを食べながら、時代小説や時代劇を満喫して下さいませ。





rohengram799 at 00:37コメント(6) 
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