東雅夫
2018年10月03日
稲熟雲便りNo.5:秋の『怪談』
小池真理子さんの『怪談』(集英社文庫)を読みました。秋に怪談というと、飯田蛇笏の「くろがねの秋の風鈴鳴りにけり」みたいに、季節外れのもの悲しさみたいな喪のを感じますが、どちらかといえばファンタジーに近いかも?
「岬へ」「座敷」「幸福の家」「同居人」「カーディガン」「ぬばたまの」「還る」・・・稲川淳二さん的な、正統派(?)ホラーというより、人間の心が造り出した「なにか」を書いているように感じました。怖いことは怖いのだけれど。特に「カーディガン」はアヤシイものの正体がわからない不気味さ、でも気になって引き付けられつてしまうところとか、ヒャー!でしたね。
私が1番好きなのは「還る」です。昭和16年生まれの女性が語る、還暦をむかえるまでのいろんな嬉しいこと、悲しいこと、出逢いと別れ。
愛したり愛されたり、求めたり失ったり、泣いたり笑ったり、魂と呼んでもいいのでしょうけれど、一刻の休みもなく、井戸を掘り下げていくようにして、自分の意識の底の底を掘り続けていた人の心が、そんなに簡単に消えてなくなってしまうものだとは、どうしても思えなくて。いい年をしておかしいかしら。(p249)
死んだというのに、やっぱりまだ心は生きているのね。その心に衣装をまとって、粘土細工みたいに顔やら姿かたちやらを作って加えて、そうやってあちら側の世界から死者はもどってくるのね。あちら側の世界とこちら側の世界はいつも、目に見えないところでつながっていて、そのつながっていることに気づくことにできた人だけが、還ってきた人と再会を果たすことができる……そんなふうに思います。(p281)
東雅夫さんの解説もよかったです~お盆やお彼岸の時期に読みたくなる作品のひとつですわ。
https://blog.goo.ne.jp/tetokosan/e/265a5409623a3f2ddefa6d1b8623a5fa
「岬へ」「座敷」「幸福の家」「同居人」「カーディガン」「ぬばたまの」「還る」・・・稲川淳二さん的な、正統派(?)ホラーというより、人間の心が造り出した「なにか」を書いているように感じました。怖いことは怖いのだけれど。特に「カーディガン」はアヤシイものの正体がわからない不気味さ、でも気になって引き付けられつてしまうところとか、ヒャー!でしたね。
私が1番好きなのは「還る」です。昭和16年生まれの女性が語る、還暦をむかえるまでのいろんな嬉しいこと、悲しいこと、出逢いと別れ。
愛したり愛されたり、求めたり失ったり、泣いたり笑ったり、魂と呼んでもいいのでしょうけれど、一刻の休みもなく、井戸を掘り下げていくようにして、自分の意識の底の底を掘り続けていた人の心が、そんなに簡単に消えてなくなってしまうものだとは、どうしても思えなくて。いい年をしておかしいかしら。(p249)
死んだというのに、やっぱりまだ心は生きているのね。その心に衣装をまとって、粘土細工みたいに顔やら姿かたちやらを作って加えて、そうやってあちら側の世界から死者はもどってくるのね。あちら側の世界とこちら側の世界はいつも、目に見えないところでつながっていて、そのつながっていることに気づくことにできた人だけが、還ってきた人と再会を果たすことができる……そんなふうに思います。(p281)
東雅夫さんの解説もよかったです~お盆やお彼岸の時期に読みたくなる作品のひとつですわ。
https://blog.goo.ne.jp/tetokosan/e/265a5409623a3f2ddefa6d1b8623a5fa
rohengram799 at 11:10|Permalink│Comments(2)