藤娘

2021年03月03日

華節雲便りNo 3:貝のヒント 🐚

今日はひな祭り🎎 ウチの実家のある山梨では1ヶ月遅れなので、県外に出てからもう40年近く経つのにまだ3月のひな祭りには違和感があります( ̄▽ ̄;)

段飾りの他にケース入りの藤娘と汐汲の日本人形を飾ってくれましたが、汐汲は働き者になるようになのかと思っていたら、幸せをたくさん汲むように、という意味だったと、この歳になって初めて知りました(;´д`) 私の知識の桶にはあちこちに穴が空いているのかもしれません💦

*****

ひな祭りの食卓には潮汁…なので(作りませんが)吉野弘さんの『貝のヒント』という詩を。めでたい!という内容ではありませんが、こんなことから考えを広げていくのは悪くないのでは、と思いました。ちょっと難しいですが。

*****

貝のヒント 吉野 弘


二枚貝の貝柱を綺麗に剥がすには
片方の貝殻の縁(へり)で貝柱の根もとをこそぐのが一番
箸やフォークやナイフでは
なぜか。綺麗に剥がすことができない
どういう理由だろうかと
かねがね不思議に思っていた。

今日、蛤の酒蒸しを食べながら
妙なことを思いついた

貝柱が貝殻で綺麗に剥がされるのは
貝柱が貝自身の言葉に応答するからだ
木や金属でうまく剥がすことができないのは
木や金属の言葉に貝が応答できないからだ

人間も、人間の言葉に応答できるが
人間を超えるものの言葉には、うまく応答できない
多分、そのようなもの

木炭を必要な長さに割りたいときは
火箸や金槌で叩くより
木炭同士打ち合わすほうが綺麗に割れる
あれも
木炭が木炭の言葉に応答する
ということだろう

言葉が少しの障害にも出会わず或るものに届く
同室の世界があるのだ

蒸されて死んだ貝の貝柱が
木や金属の言葉には応答しなかった
しかし
蒸されて死んだ貝自身の言葉には応答した
言葉とは
そのように聞き届けられるものか

人間が、人間の至らなさを恥じ
人間を超えるものの言葉に絶えず耳を傾け
しかし、なぜかその言葉に充分に応答できないまま
永い永い歳月を経てきたのも
考えてみれば、理由のあること

貝柱が納得するのは
他でもない、貝自身の言葉によってなのだ
生きている間だけではない
死んだあとでさえも……

人間が無数の異質に囲まれ
それらの言葉を古くから謙虚に聞こうとしてきたことを
勿論、私は知っている
異質の最大のものは、おそらく、神で
その言葉の刃先に身をさらし
箸やナイフの先で引きちぎられる貝柱さながら
引き裂かれつつ言葉を聞こうとする人々のいることも
私は知っている
また、木や草や風や雲など無数の生物無生物から
言葉を聞くことに長(た)けた人々のいることも

それにもかかわらず
貝柱を綺麗に剥がす貝殻の
間然するところない言葉に憧憬するのはなぜか

*****

昨日は荒れた天気でしたね。今日は穏やかな楽しい1日になりますように。では ♪(o・ω・)ノ))



rohengram799 at 08:50コメント(2) 

2014年04月04日

おぼろ雲便りNo.4:雛の家

『草の戸も住み替わる代ぞ雛の家』


芭蕉は「奥の細道」の旅に出る時に、江戸で自分が暮らしていた家をお弟子さんか知り合いに譲ったみたいですね。その方には娘さんがいらしたのでしょう~主が替わり、自分が住んでいた時には縁のなかった雛人形が飾られる……人もまた変わっていく、みたいなことを考えたのかしらん? 田舎では昨日がひな祭りなので、この句を思い出し、また久世光彦さんの『雛の家』を読んでいます(笑)


時代はふたつの大戦の狭間、、日本橋の老舗人形屋「津の国屋」の美しい三姉妹、ゆり子、真琴、菊乃の恋物語です。今は菊乃ちゃんが出遅れてまだ清らかなままですが(半分も読んでいないからこれからのお楽しみだ←おやぢ!)これが男三人ではむさ苦しいというか、跡取りの長男以外は他のお店に修行に出されて、いろいろやらかしそう( ̄▽ ̄;)


『そのなかに汐くむ雛のあはれかな』(久保田万太郎)


実家には、多分七段飾りがあると思うのですが、ケースに入った日本人形も母が飾ってくれました。藤娘はなんとなくわかるのですが(可愛らしい)「汐汲」と書かれた人形はなんだろう?と疑問でした。綺麗な着物姿なのに天秤棒担いでいるし……働き者になるようにってことなのかしらん(; ̄Д ̄)?と自分なりに意味を見出だしていたのですが「水桶を担い、金烏帽子をかぶって狩衣を着けた娘海女(あま)の松風が、都に帰った恋人を慕って舞う姿」なんですと! 烏帽子に狩衣(実際には長絹という能装束)、これは都へ帰ってしまった在原行平が残したという形見の品らしい。一途な女心を表した人形なんでしょうか? なんか失恋してちょっと違う世界にいっちゃった若い娘さんという気がしないでもない……こんな風に思うのは私だけかしら(-""-;)


ウチにあるのと同じお人形さんの画像がないかと探したのですが、今風のお顔でちょっとポーズも違うお人形さんばかり~まぁ時代が違いますもんね(´д`)






rohengram799 at 21:50コメント(10) 

2012年04月03日

第735号:ざわざわ…桃色のファンタじぃ(~_~)

『春風の花を散らすと見る夢は覚めても胸の騒ぐなりけり』


西行さんの歌でしょうか…夢でも胸が騒ぐ光景なのに、映像ではそれに近いものが~長崎の桜の木が“わっさわっさ”という感じに揺れているのを朝のニュースで見ました。こちらは朝は晴れて風もなかったのにお昼頃には曇り空で風もだんだんと強まる気配です。ああ、イヤだぁ~帰りは9時頃だけれど、どうなっているのかしら!?皆さまもどうぞケガや被害のありませんよう、お気をつけ下さいまし!!


ところで、すっかり忘れていたのですが、今日はワタクシの実家の方ではひな祭りです。今はお雛様を飾るスペースもないくらいごった返した状況の実家になっておりますが(--;)幼い頃は母がきちんと飾ってくれました。大きくなるにつれて、手間だからとガラスケースに入った日本人形を飾るようになりました。藤娘と汐汲みだったような…藤娘はともかく潮汲みはイマイチわからなかったのですが、働き者のお嫁さんってことですかねぇ?(((・・;)


「桃の節句」なので、桃にちなんだ句をひとつφ(..)


『桃の花宿に立てれば主さへすけるものとや人の見るらん』(大江嘉言 後拾遺集)


~桃の花が家の庭にあるので、家主である私まで色好みだと他人は見るのだろうか(~_~;)~みたいな(笑)いやいや、オジサン、考えすぎだって('~`;)と声をかけたくなるような歌でありますな!大江嘉言さんは男性と思われますが、オジサンかどうかは不明~でも中高年のイメージがある( ̄ー ̄)案外うら若きお年頃の青年時代の作品なのかしら?


“すけるもの”が透明人間ならコレはコレでまた楽しいピンクホラーになる予感(^.^)←私だけ!?





rohengram799 at 14:11コメント(7) 
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